まずは社長自身が変わることが大切

権限委譲という甘い言葉に多くの人は誤解し、それが器の大きい社長のあり方とでも思っているのであろう。上手くいけば自分の手腕、そして失敗したときは責任を部下本人に取らせる。こんなことで会社が順調に伸びるはずはない。

黒田社長もそれ以来、「幹部にどうこう言う前に、自分が変わることだと心に誓い、社長の責任、自覚と覚悟、主体性を、自分の人生、経営の中心に据えて生きてきたつもりだよ」と、いつものように物静かに笑いながら話された。

自社の幹部教育にも「いかに、自分が変われるか?」を社長自らが説かれ、時間をかけ立派な幹部を輩出している。それが証拠にこれまで何人もの社長を育てられ、新規の事業を本業の周りに配し、200億円に迫る企業グループを率いている。

“不良社長”たちの怒られ自慢大会

一倉ゼミや経営計画の合宿セミナーで仲良くなった社長が集まると、自然と先生にどう怒られたか、どっちが酷く叱られたかの自慢大会が始まるのである。

同じような体験を経てきているし、いい会社をつくりたい決意は固いので親しくなるのに時間はかからない。

先生自身も「とにかく異業種の社長仲間を全国に作りなさい」と勉強だけでなくゴルフも宴席も奨励していたから、傍目から見れば豪快に遊びまわっている不良社長集団に映ったかもしれない。

しかしながら内実は、先輩社長が後輩の悩みを聞いたり、自社で取り組んだ戦略が上手くいったこと、逆に失敗した事例など包み隠さず情報交換していた。異業種の集まりであるから互いの決算書を見せ合い、包み隠すことも駆け引きもなく経営の活きた知恵を自らの事業に応用し、業績を伸ばしていたのである。

皆、オーナー社長であるから、事業経営の事だけではなく、親子問題、事業承継、夫婦問題など書籍ではなかなか踏み込めない経営者独特のテーマも活発に議論されていた。

だから家族ぐるみの付き合いが始まり、生涯の友を得たといわれた社長も本当に沢山おられた。

同じ価値観を持ち、24時間365日、遊んでいる時でさえ頭のどこかで会社のコトお客様のコトを考えつづけている真剣な姿勢から、私も事業経営の奥深さと崇高さを学ばせていただいた。