受験偏差値が高いのに、自己モニタリング力が乏しい人の特徴

でも、それは自分が掘った落とし穴だ。彼らを見ていると、受験偏差値が高いだけで、メタ認知力が低いのかもしれないと感じることがある。

「メタ認知」とは、自分の認知を認知するという認知心理学の言葉だ。例えば、「自分の知識は足りているか」「自分の思考が感情や周囲、上司の意見などによって歪曲されていないか」などを、自己モニタリングして、その都度、自分を修正する(メタ認知的活動)ことは、人が成長する条件となる。

感嘆符
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「自分がどんなときにバカになるか、ミスをするのか」を知ることは、このメタ認知的知識に当たる。学歴ばかりが高く、メタ認知力が低い人間は、自分というものがわかっていないので結果的に何度も同じミスをする。

受験偏差値が高ければ希望の大学や企業に入ることはできるかもしれない。しかし、人生は長い。山あり谷ありだ。そうした人生の旅を歩む時、メタ認知力が劣っているばかりに、定期的な自己モニタリングができず、前にやったミスを繰り返すといった失態を演じ、「思わぬ転落」となることもあるに違いない。

「わたし、失敗しないので」なんて人はありえない

大事なのは3つのポイントだ。

すなわち、失敗学の発想をもとに、今取り組んでいる仕事において過去にどんな失敗事例があるか検証すること。さらに、自分の感情(とくに不安感情)によって自分の思考パターンが変わっていないか、あるいは周囲の意見に振り回されていないか、をチェックする習慣を怠らないこと。そして、歪みや偏りを正し、その都度、自分を修正すること。

人気医療ドラマの主人公が言う決めセリフに「わたし、失敗しないので」がある。そんなスーパースターが日本人は好きだが、この世に失敗しない人などいない。

「神の手」と言われる名医の手術を見たことがある。確かにそのスキルは見事なものだったが、いささか周囲のスタッフへの態度が傲慢に見えた。ところが、部下の医師に聞くと、そのゴッドハンド医は手術が少しでもうまくいかないと、「僕ほどダメな医者はいない」と泣き叫ぶのだという。それゆえ、いくら偉そうにしていても、看護師たちはそれを「真剣な取り組みの裏返し」だと理解して、嫌う人はいないそうだ。