家事代行サービスに任せ、より働くようになる

こうした結果は、高時給のため時間が大事である(経済学では、時間の機会費用が高いという)女性ほど、単純労働者である移民の流入の影響を受けて、時間の使い方を変えると解釈されている。時給が高ければ、家事代行サービスにお金を払っても、元がとれるというわけだ。

それだけではない。最近まで働いていたが、現在働いていない女性への影響も考察している。それは職業に基づいた分析だ。まず、男性の賃金水準に基づいて、賃金の高い順番に職業を並べる。すると、もっとも賃金が高い職業(たとえば、医者や弁護士)の女性は、労働時間を増やしていた。しかし、現在働いていない女性が、働くようになるわけではなかった。時給が高い職業に就くような人たちは、すでに働いている割合が高いからではないかと推測されている。

また、潜在的に長時間労働が一般的である職業についても、似たような結果が出ている。男性が長時間労働(週に50時間や60時間以上)をしている割合が高い職業で働く女性の場合には、単純労働者である移民が増えると、長時間働く確率が増えていた。

さらに、教育水準が高い女性にも同様な影響が見られる。高度な技能を有する女性の労働時間が増えるのだ。特に、博士号や専門職学位(法曹や医師・薬剤師などへの学位)を持つ女性の労働時間への影響が大きくなっている。一方で、教育水準が高い女性の労働参加(働いていない人が働き始める)は認められなかった。

“移民の恩恵”にあずかれる女性は上位25%

単純労働者である移民の増加によって、一部の女性の勤務時間が増えることは分かった。では、家事に費やす時間はどうだろう。コルテスとのテサーダの仮説は、移民が女性の家事を肩代わりしてくれるので、長時間働けるというものだ。勤務時間は増えても、家事の時間が変わっていなければ、働きやすい環境になったとはいえない。コインの表と裏を見てみよう。

コルテスとのテサーダの分析によると、賃金の高い女性(世帯主である妻または女性の時給が上位25%に入る場合)は、1980年から2000年にかけて流入した単純労働者である移民の影響で、家事の時間を週当たり約7分減らしていた。

また、彼女らが家事代行サービスへ支出する確率やその支出額も増えた。ただし、支出額は、四半期で約200円増えたにすぎない。かなり少額の変化だ。増加額が少ない理由については、分析の対象となった家事代行サービス(ハウスキーピング)には、データの制約により造園、食料品の買い物、洗濯などが含まれておらず、限定的なサービスだからだと説明している(一方、先述の家事時間の分析では、これらの家事も含まれている)。