毒性は毎年流行するインフルエンザと同程度か

毎日新聞の社説(2月8日付)は「新型肺炎とデマ 差別生まない情報発信を」という見出しを掲げ、こう主張する。

「今回も中国人を中傷する投稿がネット上に出ている。欧米では、日本人も含めたアジアの人々への差別的言動が問題になっているという」
「現在、感染拡大を防ぐため、感染者や感染の可能性が否定できない人の生活に、一定の制限が加えられている。政府には、そうした人たちへの偏見を招かないように、正確な情報発信が求められる」

ハンセン病の歴史を振り返ればわかるように、感染症には差別や偏見が付きまとう。これも正確な情報を得ていないからだ。

新型コロナウイルスは未知の病原体で、まだ分からない点も多いが、その毒性は毎年流行するインフルエンザと同程度とみる研究者や専門家は多い。沙鴎一歩もこれまでの取材経験からそう思う。

ただし新型コロナウイルスは新種だ。それだけ感染しやすい。一方で、毒性は弱い。大半の感染者は軽症で、なかには症状のない不顕性感染者もいるようだ。潜伏期間は最大12日程度と長く、この潜伏期間中にも他人に感染させる。軽症の感染者や潜伏期間にある感染者は元気だから歩き回る。そして感染が広まっていく。こうした感染ルート少しでも絶つ努力が、個人的にも社会的にも求められる。

正確な知識を持って「正しく恐れる」ことが重要だ。そうすればデマをおさえ、差別という卑劣な愚行を未然に防げるはずだ。

コウモリの腸管に存在したウイルスだから肺炎を引き起こす?

新型コロナウイルスの感染拡大で気を付けなければならないのは、心臓病などの基礎疾患のある人や体力のないお年寄り、つまり健康弱者だ。健康弱者は肺炎に陥る危険がある。

なぜ肺炎になるのか。これは研究者らの解明を待たなければならないが、「新型コロナウイルスはもともとコウモリの腸管に存在したウイルス」との説が有力で、実際に中国の研究者が類似したウイルスをコウモリの体内から検出している。

コウモリの腸管はそれなりの温度がある。新型コロナウイルスは人の上気道よりも、体温の高い下気道を好み、そこの細胞内で増殖し、結果として肺の上葉部で炎症を引き起こしているのだろう。