夫婦2人とも収入が途絶えることなく70歳まで返済をできるか
以前はローンを組む場合、夫なら夫だけの収入を想定することが一般的でした。
多くの人は、30〜35年の長期ローンを組みますので、35歳で借りたとしても、70歳まで支払い続けることになります。そろって35歳でローンを組み、「億ション」を購入した夫婦が、2人とも収入が途絶えることなく、70歳までローンを返済し続ける。そんなことが現実的に可能でしょうか?
経済の風向きが変わって初めて気づくのが、「借りることのできる金額が、返せる金額ではない」という真実なのです。
次に忘れてはならないことがあります。住宅ローンの金利は、これ以上、下がることはないものの、上がっていく可能性はいくらでもあるということです。日銀の総裁が、これらもずっと黒田東彦氏であり続けるわけではありません。安倍政権も未来永劫続くわけではありません。今のような超低金利政策がいつまで続くのか、これこそ「神のみぞ知る」なのです。
また経済政策の原則からすると、政策上不景気の状況下で金利を上げることは起こりえませんが、仮に日本の財政破綻の問題がクローズアップされ、長期国債の利回りが上がっていくようなことがあれば、住宅ローン金利も上がっていく可能性も否定できません。
日本版・サブプライムローン破綻が起こる?
危惧していることはほかにもあります。20年ほど前までは、東京近郊の3000万円後半から4000万円程度のマンションを購入できるのは、目安として年収500万円以上の層でした。年収300万円前後の層は、販売者側も、お客として想定していませんでした。
ところが現在では、年収300万円前後であっても、東京近郊のマンションをローンで購入することが可能です。なぜなら、金利が下がったため、計算上は支払いが可能になったからです。ただ、先ほどから警鐘を鳴らしていますように、30〜35年という長期ローンを払い続けることを前提としたとき、果たして現実的に支払いが可能なのかどうか、長期にわたって収入が保証されている職業なのでしょうか。
あるデベロッパーの役員は、こう危惧していました。
「近年は、かつてはマンションを買うことができなかった層にも、販売するようになっている。これが将来、日本版・サブプライムローン問題を引き起こす可能性がある」と。
私もまったく同感です。一方、年収500万円前後の層の方々も、20年ほど前に比べ、ワンランクもツーランクも高額の物件を購入するのが当たり前になっているようです。
仮に今後、金利が上がっていったときに、返済を続けていくことが可能なのでしょうか?
読者のみなさんの中に、住宅ローンを変動金利で組んでいる方がいらっしゃったら、将来の破綻を避けるために、固定金利に切り替えることを強くおすすめします。経済は生きものです。金利の上昇も含め、これから何が起こるかは誰にも予想できないのです。