理想論を振りかざし主張の正当性だけを押し付けてくる

2020年1月31日、ストックホルムにて(写真=TT News Agency/アフロ)

ひとつは、彼女が「ティーンエージャー」だったからだろう。子供が見せる反抗的な言動は、大人にとって時に極めて腹立たしい。人をばかにしたような挑戦的な態度で親の威厳を踏みにじり、理想論を振りかざして、主張の正当性だけを押し付けてくる。特に、上下関係を重んじる権威主義的・父権的な人には、そう見えたのだろう。

しかも、「怒り」という感情の大樽をひっくり返したような、気迫ある話し方が聞き手の心の扉をこじ開けてしまった。感情、特に怒りは伝染しやすい。不倫をした芸能人が徹底的にたたかれるように、ネットなどで情報が拡散する現代では、怒りの集団感染が起きやすい。グレタさんの支持派は腰を上げない政府や人々に対して、一方、批判派は自分たちの考えや行動を攻撃するようなグレタさんの物言いに対して、怒りをマグマのように膨らませ、爆発させた。

女性の怒りが男性の怒りに比べ許容されにくいのはナゼなのか

「これは明らかなミソジニー(女性蔑視)」という解説もある。たしかにグレタさんが女性であったことも心理的には大きく影響している。女性の怒りは男性の怒りに比べて、許容されにくいからだ。

これは女性のコミュニケーションのダブルバインド(二重拘束)と言われる。女性が何かを主張する時、大人しく、弱々しいと、相手にされず、怒りをもって強く主張すれば、「ヒステリーだ」と指弾されやすい(参考記事:「怒りながら叫ぶ女」はどうして嫌われるのか)。

この女性のジレンマを、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグは「女性が職場で話す時、まるで綱渡りをしているようなものだ。一方に転べば、全く耳を貸してもらえない。一方に転べば、攻撃的すぎる、と批判される」と形容している。

例えば、ドナルド・トランプ大統領が怒りを見せると「男らしい」と評価されるが、大統領選挙を争ったヒラリー・クリントン氏が怒れば、「ヒステリック」「冷淡」とレッテルと張られる。女性の怒りは男性の怒りより、確実に反感を買いやすいのだ。