中国のジョークは古典由来が多い

現代の中国は、共産党による専制政治体制がとられ、言論や表現が厳しく統制されています。そのような社会で、一般の市民たちはネット上で皮肉や風刺に満ちた「小話」を披露している、とよく言われます。「笑い」が、現実社会の一種のガス抜きとして機能しているのでしょう。

そんな「生きづらさ」を感じさせる隣国、中国ですが、実は長い「笑い」の歴史を誇ります。専門用語で言うと、「滑稽本」「滑稽文学」の流れです。その代表格といえば、明の時代の末期に編纂へんさんされた笑話集『笑府』でしょう。『笑府』は「笑い話の倉庫」という意味で、多様なジャンルの笑い話を13巻にまとめたものです。

実は、『笑府』は落語にも影響を与えたことが明らかになっています。

「まんじゅうこわい」は、『笑府』の原作をほぼ流用して作られたとされています。

現在の中国では、政治批判を主とした風刺の笑いが主流になっていますが、おおらかな「笑いの古典」を数多く生み出していた時期もあるのです。

有名な中国のジョーク

【ロバを連れた親子のお話】(※古典より。詳しい出典は不詳
農村に住む親子が、1匹のロバを連れ、街まで買い物に出かけました。
父親がロバに乗り、息子はムチを持って後ろを歩いていると、通行人のつぶやきが聞こえてきました。
「自分だけロバに乗って、子どもを歩かせるとは、ひどい父親だ!」
父親は、あわてて息子をロバに乗せ、自分は歩くことにします。
すると、別の通行人の声が耳に入りました。
「父親を歩かせて、自分だけロバに乗っているとは、親不孝な息子だ!」
父親は、自分もロバに乗ることにします。
しばらく行くと、また別の通行人にこんな言葉を投げつけられました。
「ロバに二人も乗るとは、お前たちはロバを殺す気か!」
親子は急いでロバから降り、ロバを引いて二人で歩いて行くことにしました。
その後、別の通行人に指をさされ、とうとう笑われてしまいます。
「あの二人はなんて馬鹿なんだ。せっかくロバがいるのに乗らないとは!」
これを聞いた父親は、縄を探してロバを縛り、息子と二人で街まで担いでいくことにします。しかしロバはとても重いもの。通行人たちの邪魔になるのを心配した親子は、大声で叫びながら進んでいきます。
「畜生ー! 道を開けてくれぇぇぇ!」