保育の仕事は薄給で、社会的評価も低い
昨年10月から「幼保無償化」が始まった。だが、それは親たちが本当に求めていることだったのだろうか。むしろ求められているのは、親も子も安心して通える保育施設を十分に用意してほしい、ということではないだろうか。
認可保育園は数が足りないといわれる。資格を持つ保育士は119万人(2015年現在、厚生労働省調査)いるが、保育士の仕事に就いている人は43万人しかいない。
保育士の平均年収は358万円(平成30年賃金構造基本統計調査)。これは日本人の平均年収441万円(平成30年国税庁調査)より83万円低い。しかも保育の仕事は社会的評価も低い。10月に発表されたOECDの保育士意識調査では、8カ国のなかで最も保育士の自己肯定感の低い国が日本だった。
新米の母親だったころ、こんな保育園に通えていたら
このほど『真夜中の陽だまり ルポ・夜間保育園』(文藝春秋)を上梓した。
取材をした博多の「どろんこ保育園」は、昼と夜を合わせて180人を預かる昼夜合同の認可保育園だ。九州一の歓楽街・中洲のそばにあり、朝7時から夜中2時まで開いている。モンテッソーリ教育と自然農法の野菜を使った伝統的な献立の給食を実践している。
4年前、園舎の現代建築を取材のために訪れたはずが、その後3年も通うことになったのは、どろんこ保育園には子育てを支える社会のありようについて、普遍のメッセージがあると思ったからだ。平たく言えば、新米の母親だった頃、こんな保育園に通うことができていたらどんなによかっただろうと思った。
本稿ではどろんこ保育園の取材を振り返りながら「保育の仕事」について考えてみたい。