いよいよ10月から始まる「幼児教育・保育無償化」。京都大学大学院准教授で『子育て支援が日本を救う』の著書のある柴田悠さんは、一定の意義はあるものの、デメリットも大きいと指摘する。無償化後の日本に起こることとは――?
※写真はイメージです(写真=iStock.com/gyro)

地方での虐待予防効果は期待できる

10月から幼児教育・保育無償化が始まり、3~5歳は全員無償、0~2歳は住民税非課税世帯のみ無償になります(幼稚園と認可外保育施設は上限額まで無償化)。これには一定の意義がありますが、課題もあります。

第1の意義は、地方で虐待予防が進むことです。

虐待などの不適切な養育は、幼児の脳を物理的に変形させ、その後の社会生活を困難にしてしまいます。東京大学の山口慎太郎准教授らが全国調査データを分析した研究によれば、母親が高卒未満の家庭では、不適切な養育が生じやすく、子どもの社会的発達が悪化しやすいのですが、子どもが2歳半時に保育所に通っていると、不適切な養育が予防されやすく、子どもの社会的発達が健全になりやすい。

そのため、保育所定員に余裕のある地方では、無償化によって、社会経済的に不利な家庭の保育利用が増え、虐待予防が進むと期待できるのです。