日本の3~5歳児保育基準は先進国で最悪

日本の保育士・幼稚園教諭配置基準(1人の保育士・幼稚園教諭が児童を何人まで見てよいか)は、0~2歳については先進16カ国平均(0~3歳7人)よりも手厚い(0歳3人、1~2歳6人)。

しかし、3~5歳については先進19カ国平均(3歳以上18人)よりもはるかに悪く、先進19カ国で最悪です(3歳20人/保育士、4~5歳30人/保育士、3~5歳35人/幼稚園教諭)(2012年OECD報告)。

また保育士の学歴は、先進諸国の中で中程度ですが、もし保育所が3~5歳児童を国の基準ギリギリまで受け入れた場合には、そこでの保育士の労働環境と保育の質は、先進諸国の中ではかなり悪いレベルになるでしょう。

子どもの発達への影響が研究で明らかに

「幼児教育・保育の質が園児の発達に与える影響」についての最新の国際比較研究によれば、そのような質の低下した保育所に子どもが通った場合には、その子どもの発達(認知能力や非認知能力の短期的・長期的発達)は、通わない場合よりも悪くなる可能性が高い(図表1参照)。

そのため主に都市部では、無償化によって待機児童が増えることで、保育の質が低下し、子どもの発達に悪影響が生じかねないのです。

幼児教育・保育の質が園児の発達に与える影響

まずは待機児童減と保育の質確保を

柴田 悠『子育て支援が日本を救う』(勁草書房)

ではどうしたらよいでしょうか。

待機児童を減らすとともに、保育士の給与・労働環境を改善し、保育の質を守るべきです。そのための財源は、無償化の制度を一部修正すれば捻出できます。

たとえば、幼稚園と同様に月2万5700円までを、3~5歳保育無償化の上限額とすれば、約2000億円の財源が浮くでしょう。または、3~5歳幼保無償化を、0~2歳保育無償化と同様に住民税非課税世帯に限定すれば、約7000億円の財源が浮きます。

上限額設定や所得制限は、虐待予防などの意義を大きく損なうことなく、待機児童の増加や子どもの発達の悪化を防ぐこともできます。政府に検討してもらえるように、私はさまざまな場でこの提言をしています。

  <主要参考文献>
・Yamaguchi, Shintaro, Yukiko Asai and Ryo Kambayashi, 2018, “How does early childcare enrollment affect children, parents, and their interactions?” Labour Economics 55: 56-71.
・野村総合研究所、2018、「政府の女性就業率目標を達成するために、追加で整備が必要な保育の受け皿は27.9万人」(https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/0626、2019年9月12日閲覧)
・Huizen, Thomas van and Janneke Plantenga, 2018, “Do children benefit from universal early childhood education and care? A meta-analysis of evidence from natural experiments,” Economics of Education Review 66: 206-222.

写真=iStock.com

柴田 悠(しばた・はるか)
京都大学大学院人間・環境学研究科准教授

1978年、東京都生まれ。京都大学総合人間学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。専門は社会学、社会保障論。同志社大学政策学部准教授、立命館大学産業社会学部准教授を経て、2016年度より現職。著書に『子育て支援が日本を救う――政策効果の統計分析』(勁草書房、社会政策学会賞受賞)、『子育て支援と経済成長』(朝日新書)など。