無償化で利用希望は約2割増の見込み
第2の意義は、地方での人手不足緩和と女性活躍です。
岡山市が2018年に行った保護者対象のアンケート調査によれば、無償化によって認可保育所(認定こども園を含む)の利用希望者数が、3歳児でも4歳児でも2割増える見込みです。とくに4歳児では幼稚園から保育所への需要の移動が見込まれます。5歳児については調査されていませんが、おそらく4歳児と同様でしょう。
保育所を利用するには、基本的に共働きが求められますので、保育所定員に余裕のある地方では、無償化により母親の就業が増え、人手不足が緩和されたり、女性活躍が進むと期待できるのです。
高等教育費の軽減のほうが効果は大きい
第3の意義として、育児費用が減るため、「産みたい人が産みやすくなる」という少子化対策効果を挙げることもできますが、効果は限定的でしょう。
たしかに、全国の50歳未満有配偶女性を対象としたアンケート調査(2015年国立社会保障・人口問題研究所実施)では、「理想の子ども数を持たない理由」の第1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(56%)でした。
しかし、全国20~59歳男女対象のアンケート調査(2012年内閣府実施)では、「子育ての経済的負担」の第1位は「大学・専門学校などの高等教育費」(69%)、第2位は「塾などの学校外教育費」(49%)、第3位は「小・中・高の学校教育費」(47%)で、「保育所・幼稚園・認定こども園の費用」は第4位(45%)でした。
つまり、幼保無償化によって「子育ての経済的負担感が減る」と感じる人は、子育て世代の半分弱にすぎないのです。むしろ、専門学校や大学などの高等教育費を軽減するほうが、子育て世代の7割の人々の負担感軽減につながるでしょう。
「より多くの人々にとって産みやすい環境を整える」という意味では、幼保無償化よりも高等教育費軽減のほうが効果が大きそうです。さらに、より根本的な対策としては働き方の柔軟化こそが必要でしょう。