現在の法律を使って国内対応をするためにどう知恵を絞るか
以上は、感染地域からの流入コントロール(国外対策)であるが、感染者であっても日本人の入国を禁止するわけにはいかない。この場合には、入国を認めた上で、検査・追跡・監視する必要がある。さらには国内感染が広まってきたときにも、同じように検査・追跡・監視を強化する必要がある。
ところが今の感染症法や検疫法では、今回の新型肺炎の感染者には政府は十分な国内対応ができない。
今回の新型肺炎は2類感染症に位置付けられているので、症状が出ていない無症状病原体保有者には何の対応もできない。また検疫法2条3号の検疫感染症に位置付けられているので強力な検疫(隔離・停留)ができない。
法律改正ができればそれに越したことがないが、法律改正が間に合わなければ、今回の新型肺炎を1類感染症に位置付ける屁理屈がある。
そうすると、感染症法上、症状が出ていなくてもウイルスを保有していれば(無症状病原体保有者)、「患者」として扱って対応することができるようになる。
また新型インフルエンザ「等」の「等」の中に、今回の新型肺炎を入れ込むという知恵もある。そうすると、この場合は強化された検疫はできないが、無症状病原体保有者を感染症法上「患者」として扱って対応できるようになる。さらに1類感染症や新型インフルエンザ「等」に入れ込むことができなくても、検疫法34条を活用すれば、検疫を強化できるという知恵もある。
このような解釈は、役人は嫌がって反対するだろう。だからこういうときにこそ、与野党を超えて政治家が一致団結し、役人と論戦して、役人を動かしていかなければならないのである。原則は法改正、それが間に合わないなら屁理屈。このようなことを議論するのが国会の場だ。
もしも日本が感染地域になったら?
これはまだまったく議論されていないことだが、日本が感染地域になった場合に、日本国民を出国禁止にできるか。
(略)
日本には憲法22条があるので、国民の出国を一気に禁止することはできない。そうすると、日本が感染地域になった場合に、日本は感染症を世界にばらまくことになる。
日本も感染地域になったときに、国民の出国を一気に禁止することができるのか。悩ましいところだが、ここも政治家が国会においてしっかり議論すべき領域だ。
(略)
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※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.186(2月4日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【フェアの思考(4)】新型肺炎の蔓延阻止へ! 安倍首相の「前例なき政治決断」を断固支持する》特集です。