学ぶ内容をビジネスの視点で再構成すること
経営学を学びやすくするもう1つのポイントは、学ぶ内容をビジネスの視点で再構成することです。経営学は専門分野の集合体なので、ふつうは専門分野ごとに教えられています。しかし、それぞれの分野は他の分野のことをあまり気にしていないため、各分野の関連性がわかりにくく、内容の重複やズレも多くなります。ゆえに実際にビジネスで使うときには、各自が学んだことをつなぎ合わせなくてはなりません。
そこで、経営学の各専門分野をビジネスの視点から横断的に再構成します。その際使うのが、ビジネスを単純化するためのフレームワーク、「ビジネスモデル」の視点です。ビジネスモデルとは複雑な現実のビジネスをシンプルに記述するための方法であり、さまざまな手法がありますが、できる限り単純化すると、次の4つの要素になります。
①ターゲット(狙うべき相手):事業には必ずその商品やサービスの利用者や対価の支払者がいて、それらが事業のターゲット(標的)となります。実際には直接の顧客だけでなく、事業成立に寄与する主要な者(ステークホルダー)すべてがターゲットとなります。
②バリュー(ターゲットに提供する価値):なぜその商品が使われ、対価を支払ってもらえるかといえば、それは価値があるからです。企業向けはわりと明確で、スペック(性能)、品質、価格、納期、サービス(QCDS)などで測れます。消費者向けはブランドや「うれしい」「楽しい」といった感覚など、さまざまです。
③ケイパビリティ(バリューをターゲットにどう提供するか):商品を開発したら営業・販促をかけて受注し、部材を調達、生産・配送して、最後は集金、アフターサービスまで行わなくてはなりません。その範囲は、研究開発からマーケティング・営業・サービス、調達・生産・物流、会計財務、人事組織経営など多岐にわたります。またリソースとオペレーションに分かれます。
④収益モデル(対価とコストは見合っているか):①②③が揃っても、コスト以上の対価を得られなければ、事業は永続的には回りません。その算段が収益モデルです。お金は使用者だけが払うとは限りません。広告主から得る「広告モデル」などもあります。
大雑把にいえば事業レベルの経営学とは、①ターゲットや②バリューを定めるために経営戦略論とマーケティング論を学び、③ケイパビリティの設計とその実現のために人・組織論とオペレーション論を学び、④収益モデルをつくり上げていくためにアカウンティング論をさらに学ぶことなのです。