「女は男の性欲を受け入れて当然だ」という認知の歪み

その背景には、アメリカで「私はAC(アダルト・チルドレン)です」とか、「パートナーとの関係が共依存的なので見直したい」と言って、心理療法士のところに大勢のクライアントがやってきているという現実がある。

堀内進之介『善意という暴力』(幻冬舎新書)

ジョーアン=クレスタンたちは、一方が他方のパートナーに不満を抱いている関係を共依存として理解したがる背景には、自立を何よりも重視し、共依存を病理化する社会の側の問題があることを指摘したわけだ。

発達心理学者のキャロル・ギリガンは、個人から社会へと道徳対象が広がっていく(修身斉家治国平天下)同心円状モデルを男性原理として批判し、自己と他者が互いに関わり合う、相互依存(interdependence)から成り立つ関係を対置している。そして、そのような関係を築けるようになることを成熟と捉える発達モデルを提唱しているのだが、これは、フェミニズムの立場から、ジョーアン=クレスタンたちの批判をより根本的に行ったものだといえる。

斉藤章佳は次のように述べている。

私はたくさんの性犯罪者や性依存症者を見てきました。彼らに共通してるのは、やはり女性を下に見て、つまりモノ化して「女は男の性欲を受け入れて当然である」というような価値観を根っこに持っているということです。だからたとえば夫婦関係でもしばしば性暴力やDVは起こります。「結婚してるんだから自分の性欲に応じるのは当たり前だろう」と性的関係を強制する。そこに合意という考えや、相手を尊重するという思いがない。そうした男尊女卑の価値観が根底にあって、それが認知の歪みにつながっています。そして認知の歪みは問題行動をくり返すことで強化されていくのです。(斉藤章佳、前掲書)
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