精神的なストレスが高いブラック職場

K6という、精神的なストレス反応を評価する簡便な尺度があり、5点以上で高ストレス状態とされる。実態調査によると、このK6について、小学校教諭の平均が5.49、中学校教諭が5.69となっており、5を大きく上回る。

なお、2018年4月21日付毎日新聞の記事によれば、過労死と認定された公立校の教職員は、16年度までの10年間で63人にも上るという。これはあくまで氷山の一角である。なぜなら、まさしくブラック企業と同様、労働時間がきちんと記録されていないため、泣き寝入りを強いられるケースが数多くあると思われるからである。

残業代ゼロを強いる悪魔の法律「給特法」

どうしてこのような異常な長時間労働が発生するのか。それは、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が原因である。

同法3条2項は「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」と定めている。すなわち、公立学校の教員は、法律によって「残業代ゼロ」にされているのである。

法律上、公立学校の教員については、いわゆる超勤4項目(①生徒の実習、②学校行事、③職員会議、④非常災害、児童生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合等)に該当する場合を除き、残業の命令をすること自体ができないことになっている。そして、給料の4%にあたる「教職調整額」が固定で支払われており、これが残業代の代わりになっている。

簡単に言えば、給料の4%がいわば「固定残業代」であり、残業を命じることができるのはあくまで例外的な場合であって、基本的に残業命令禁止なのである。しかし、これはまったくの建前と化しており、給特法は単に教師のサービス残業を発生させているだけである。

残業代請求訴訟を鎮めるための法律

戦後に労働法関連の諸法規が制定された際、公立学校の教師も労基法の適用対象となり、同法に基づき、残業代も当然発生していた。しかし、政府の再三の指導にもかかわらず、残業代不払いが横行し、残業代請求訴訟が相次いでいた。

そこで、当時の教職員の月間平均残業時間である月8時間に相当するものとして、残業代の代わりに基本給の4%を「教職調整額」として支給する給特法が1971年5月に成立し、翌年1月施行されたのである。この法律の制定を受けて、各地で給特法と同じ内容の条例(給特条例)が作られ、「教師の残業代ゼロ」という運用が開始された。

つまり、給特法は全国で相次いだ教員の残業代請求訴訟を鎮めるために制定された法律と言える。建前どおり、超勤4項目に該当しない残業が一切なければ問題なかったのかもしれないが、そうはならなかった。当然だろう。超勤4項目以外にも、残業が必要な場合があるに決まっているからである。