台風19号で福島県の工場が操業中止

10月が大幅マイナスだったのは、台風19号の影響が大きい。台風19号は土砂災害や河川の氾濫などを引き起こし、東日本を中心に各地に甚大な被害をもたらした。幸楽苑HDも福島県郡山市にある工場が浸水被害に遭い、10月13日に同工場の操業停止を余儀なくされている。これにより東北を中心に約240店が休業に追い込まれた。これは全店のほぼ半数に当たる。

翌11月に郡山工場は操業を再開することができ、休業した店舗は営業を順次再開した。ただ、休業の影響や食材の供給がしばらく滞ったことなどが影響し、11月の既存店売上高は11.8%減と大きく落ち込んだ。12月も6.7%減とマイナスが続いている。

もちろん、こうした状況に対して幸楽苑HDは手をこまぬいていたわけではない。これまでにいくつか対策を講じてきている。例えば、通常税込み440円の「中華そば」を、期間と数量を限定して10円で販売するなどして集客を図った。だが、客足は完全には戻らず、抜本的な対策には至っていない。一度離れた顧客を取り戻すことは難しく、当面は厳しい状況が続きそうだ。

ラーメン事業が全売上高の9割を占める

1カ所の工場が操業停止するだけで、経営が大きく傾いてしまう――これは、特定の対象に依存することの危険性がわかる事例といえるだろう。投資の世界には、これを表す「卵を1つの籠に盛るな」という格言がある。同じことが経営の世界でも言える。

幸楽苑HDは台風19号による被害を受けて、「いかなる局面でも利益を確保しうる利益体質の構築を推し進める」方針を表明している。この危険性を意識してのことだろう。その一環が、今回の51店の閉鎖と業態転換だ。同社は「幸楽苑」を中心としたラーメン事業が全売上高の9割を占めている。これは特定の対象に依存している状態で、リスク分散化ができていない水準と言えるだろう。そこでラーメン店の一部を業態転換してラーメン以外の事業を育て、「いかなる局面でも利益を確保しうる利益体質の構築」を実現したい考えだ。