日本のお墓は、子々孫々の継承を前提としています。先祖の墓があるうえに家族墓をつくった場合、子供が継承すべきお墓は2つになります。長男と長女の夫婦だったら3つになることもあるでしょう。家意識が希薄になる中、子供は果たして墓守を続けてくれるでしょうか。子供のいない夫婦ならなおさらのこと。せっかくつくっても、近い将来にうち捨てられて無縁墓になる可能性は高いのです。

この点、継承を前提としない永代供養墓や合葬墓は、子供に迷惑をかけたくないと考える夫婦にはうってつけです。通常、ひとつの永代供養墓には10人くらいまで入ることができるので、夫婦や親族だけでなく、友人といっしょに入る人も多く見られます。このとき、先祖の墓に入っている骨壷をいっしょに永代供養墓に移すのも一案です。菩提寺であれば、住職に相談してください。

どうしても妻を連れて実家の墓に入らなければならないとあらば、分骨という手もあります。妻の骨の一部を夫の実家に入れて、残りは妻の好きな墓に納める。

いずれにせよ、これからの夫婦生活の幸せを願うならば、すぐに「死後は別々」と決めるのは得策とはいえません。2人で仲良く墓に入るという方向で調整したいところです。また、一般的に早く死ぬのは夫のほうで、墓を継承する祭祀継承者は通常は妻ですから、妻の胸算用次第でどうにでもできる側面もあります。

「夫婦でお墓について話し合ってください。実家の墓に入りたくないと言われたら、残りの生涯をかけて夫婦関係の改善に努めましょう」。講演会などで、私はそう男性たちに呼びかけています。

(小檜山 想=構成 小川 聡=撮影)