姑と同じ墓はイヤという嫁が増えている

一部を実家の墓、残りを好きなようにさせる「分骨」という手も<br><strong>第一生命経済研究所 主任研究員 小谷みどり</strong>●奈良女子大学大学院修了後、同社入社。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。『変わるお葬式、消えるお墓』など、著書多数。
一部を実家の墓、残りを好きなようにさせる「分骨」という手も
第一生命経済研究所 主任研究員 小谷みどり
奈良女子大学大学院修了後、同社入社。専門は生活設計論、死生学、葬送問題。『変わるお葬式、消えるお墓』など、著書多数。

誰といっしょにお墓に入るかは切実な問題です。死んだら無になると頭では理解していても、生前の人間関係をそのまま持ち込んで、あの人とだけは入りたくないなどと頑なになるのが生きている私たちの思考回路なのです。数年前に行った調査では、夫の48.6%が「自分の実家のお墓に入りたい」としたのに対して、夫の実家のお墓に入りたい妻はわずか22.6%にすぎませんでした。

妻が夫側の実家の墓に入りたがらない理由は主に2つあります。ひとつは「あの世離婚」。夫のわがままに長年耐え忍んできたので、せめて死後は別居したいというパターン。社会的に離婚ができにくかった世代に多く見受けられましたが、その数はここ10年ほどでだいぶ減っています。前出の調査では、夫と同じ墓に入りたくないと考えている妻は11%でした(夫側の回答は5%)。最近は死ぬまで我慢することなく、夫の定年後にさっさと熟年離婚してしまいますから、70代、80代まで離婚せずにきた夫婦は極めて仲がよい場合が増えています。

2つめは、姑と同じ墓に入るのは嫌だというケースで、こちらは以前よりも増えています。核家族化が進み、長男でさえ親と別居することが普通になっていますが、嫁にしてみれば「この世で別々だったのに、なぜあの世でいっしょにならなきゃいけないのか」「住んだことのない土地のお墓に入りたくない」と思いますし、姑と同居していた嫁は、憎い姑とだけは墓を同じくしたくないと考える。嫁姑の確執は永遠のテーマです。

解決するには、先祖の墓を整理して、夫婦で新たに墓をつくること。ただし、従来の子孫へ代々継承されていく「○○家の墓」(家族墓)ではなくて、故人の縁故者に代わって第三者が墓の維持管理や供養を行う永代供養墓や、血縁を超えた人たちがいっしょに入る合葬墓がいいでしょう。大きな利点は、墓の数、そして子孫の負担が減ることにあります。