5人に1人は土葬だった50年前
日本では、人が亡くなって以降のことは、家族や子孫が担うべきとされてきた。例えばお墓は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承すると、民法で規定されている。慣習上の「主宰すべき者」とは誰か、までは法律には明記されていないが、多くの人は、長男がお墓を継承すると思い込んでいる。
次男や三男は新しくお墓を建てなければならない、結婚して苗字が変わった娘は一緒のお墓に入れないなどと思っている人も少なくないが、公営墓地や民間霊園では、一緒のお墓に入れる人の範囲は、「6親等内の親族、配偶者、3親等内の姻族」とされているのが一般的だ。
しかも、子々孫々で同じ墓石の下に遺骨を安置するようになったのは、火葬が普及してからのこと。今でこそ火葬率は99.9%を超えているが、1970年には79.2%で、50年前には5人に1人は土葬されていた。子々孫々で入るお墓にはそれほど長い歴史があるわけではない。「先祖代々」「○○家」と刻んだ墓石を建てるようになり、長男がお墓を継承するものだと私たちは思い込み始めたのだが、そもそも、こうした考え方は戦前までの明治民法下のものだ。
お墓の話になると「戦前にワープ」する日本社会
戦後、私たちのライフスタイルは大きく変わった。例えば子どもがいても、高齢期は夫婦のみで暮らす人が増えている。厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、65歳以上がいる世帯のうち、三世代世帯が占める割合は、1980年には50.1%あったが、2017年には11.0%にまで減少した。変わって夫婦のみの世帯が32.5%と、最も多い世帯構造となっている。
ひとり暮らしも合わせると、高齢者の6割が、すでに独居か、将来的に独居になる可能性がある。長男夫婦が老親と一緒に暮らすという住まい方はもはや少数派だ。
ところが戦後70年以上が経過したのに、お墓の話になると、多くの人が戦前の思想にワープしてしまう。娘夫婦と暮らす二世帯住宅には、二つの苗字の表札がかかっていることが多い。これがおかしなことだとは誰も思わないはずだ。苗字の異なる娘が一緒のお墓に入れないと思い込んでいることが、明治民法の呪縛なのである。
繰り返すが、娘も息子も親からみれば1親等、きょうだいは2親等なので、苗字が何であれ、公営墓地やメモリアルパークと呼ばれる民間霊園であれば、一緒に入ることは何の問題もない。