大統領と面会するなどレバノンでは英雄扱い

ゴーン氏は2018年11月19日、役員報酬を有価証券報告書に過少に記載した金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された。その後、中東サウジアラビアとオマーンをめぐる会社法違反の特別背任事件などでも逮捕・起訴された。ゴーン氏はいずれの事件でも無罪を主張していた。

今年4月には初公判が開かれる予定だったが、ゴーン氏の逃亡により裁判が開かれる可能性は低い。日本の刑事裁判では原則、被告人が1審の公判に出廷する義務があるからだ。

沙鴎一歩はゴーン氏が公判でどう無罪を主張していくかに注目していた。日本で裁判を開くためには、レバノンがゴーン氏の身柄を日本に引き渡さなければいけないが、日本とレバノンは容疑者の身柄引き渡しに関する条約を結んでいないため、可能性は極めて低い。

レバノンはゴーン氏の両親の出身国で、自身も少年期を過ごしている。ゴーン氏は、レバノンでは日本の日産を立て直した国民的英雄であり、逃亡直後にはレバノンのミシェル・アウン大統領に面会するなど歓迎されていると現地のメディアが報じている。

検察は海外メディアを集めて、きちんと反論すべき

一連のゴーン氏の事件では、容疑者が自供するまで保釈されない日本の捜査に対する批判の声が、欧米のメディアから次々と挙がった。いわゆる「人質司法」の問題である。

ゴーン氏が声明文で「日本の司法制度は法的義務を無視し、基本的な人権を否定している」「メディアとコミュニケーションができるようになった」と語っていることから、欧米メディアに日本の人質司法の問題を誇張して伝えて報道させ、自身に有利なように国際社会の理解を得ようとたくらんでいるのだろう。

日本政府は日本の司法制度が世界で誤解されないよう、国際会議などの場で説明する必要がある。安倍政権の外交力が試される。検察が欧米メディアを集めて記者会見を開き、ゴーン氏の声明文にきちんと反論すべきだとも思う。