「逃げ得を許しては司法の信頼が失墜する」

ゴーン氏の逃亡を社説で真っ先に取り上げたのは、1月3日付の産経新聞だった。社説の見出しは「ゴーン被告逃亡 保釈を認めたのが誤りだ」で、内容もこれまで主張してきた保釈反対のスタンスを貫いている。

産経らしい分かりやすさはある。しかしながらその主張がストレートで強いだけに薄っぺらさが感じられる。ここぞとばかり産経社説は書く。

「東京地裁はゴーン被告の保釈を取り消した。保釈金15億円が没取されるのは当然としても、保釈を認めた地裁の判断が適切だったのか厳しく問われよう。弁護側の責任も重い。保釈が認められるのは、逃亡や証拠隠滅の恐れが高くない場合に限られる。そのどちらも懸念されていたことである」
「悪意を持って企てれば、保釈にどんな条件や手立てを講じても無になる。それが分かっても遅きに失した」
「世界的に注目されるゴーン被告の逃亡を許し『日本の刑事司法の恥を世界にさらした』との厳しい見方もある。逃げ得を許しては司法の信頼が失墜する」

人質司法の問題に触れないのでは検察の代弁者

産経社説は地裁の判断を問題視し、弁護士の責任を追及する。だが、人質司法の問題には触れない。ゴーン氏の保釈に真っ向から反対し続ける。その姿勢はまるで検察の代弁者のようである。

極め付きは「逃げ得」という言葉だ。海外メディアの批判であろうと、素直に聞いて是正すべき点は直す。いまの社会、そうした柔軟な姿勢が欠かせない。

司法は検察のためにあるのではない。司法は私たち国民のためにある。その基本を筆者である論説委員は理解しているのだろうか。産経社説のファンとして悲しい思いがする。