日産だけではなく、ルノーでも私物化を繰り返していた疑い

ゴーン氏はレバノンのほか、生まれ育ったブラジルと長く生活したフランスにもそれぞれ国籍を持っている。そのフランスでは大手自動車会社のルノー会長時代に社費を流用した疑惑が浮上し、事件として捜査が進められている。

フランスの検察は2019年7月にパリ郊外のルノー本社を家宅捜索したが、これはゴーン氏が2016年にベルサイユ宮殿で開いた自身の結婚式にルノーの社費を充てた事件の捜査のひとつだった。

ルノーと日産の統合会社「ルノー・日産BV」でも、ゴーン氏が1100万(13億4000万円)を不正に引き出していた疑いが出ている。

ゴーン氏は日産だけではなく、ルノーに対しても私物化行為を繰り返していたことになる。会社の資産はすべて会長である自分のものという彼の強い私物化意識がにじみ出ている。

日本政府はフランス政府に対し、ゴーン氏の身柄確保の協力を求めるべきである。日本の警察庁はすでに国際刑事機構(ICPO)を通じてゴーン氏を国際手配しているから、フランスの警察や検察も動きやすいはずだ。

どうやって日本を脱出してレバノンまで逃げたのか

ゴーン氏はどうやって日本を脱出してレバノンまで逃げたのか。現在、警視庁が東京都港区の住居周辺の防犯カメラ映像を解析するなどして出国までの経路の特定を進めている。警視庁や検察は、逃亡の手口を明らかにしてほしい。

これまでの報道を総合すると、ゴーン氏は昨年12月29日午後11時10分に関西空港をプライベートジェットで飛び立ち、12時間後にトルコのイスタンブール到着し、そこから別のプライベートジェットに乗り換えて翌30日にレバノンのベイルートに入った。この便はいずれもトルコの航空会社による運航だった。

しかしゴーン被告の氏名での出国記録はなく、出国審査を義務付けた出入国管理・難民認定法に違反した疑いが濃厚である。

トルコのアナトリア通信によると、トルコ警察は1月2日に、ゴーン氏がトルコ経由でレバノンに逃亡してことで、計7人の身柄を拘束して事情を聴いている。ゴーン氏に複数の協力者がいたことは間違いないだろう。その協力者たちにかなりのカネが流れたとも報じられている。