通信生だけではなく、通塾生も合わせた中で1位になった

決勝大会の会場で息子のテストが終わるのを待っていると、母親は塾のスタッフから声をかけられた。

自宅は地方在住であることを告げ、入塾を断ろうとしたら、「(四谷大塚には)通信教育もあります」と聞き、母親は通信教育の入会を決めた。

当時、Sくんは国立大学附属小学校に通っており、そのまま附属中学校に進学する予定だった。つまり、中学受験をする予定はなく、通信教育に入会したのも「学力を伸ばせれば」ぐらいの軽い気持ちだったそうだ。

ただ、小3の間は通信教育の教材にほぼ手をつけなかったという。幼稚園から自宅で公文に取り組んでおり、その当時、すでに高校生レベルに達していたため、小3向けの教材を解く意味が見出せなかったのだ。

新4年生になり、教材が中学受験向けの「予習シリーズ」になった。学習のまとめとなる「週テスト」が同封されているのを見て、母親は「一度ぐらいやってみる?」とSくんに週テストを解かせてファックスで答案用紙を送った。

「そうしたら、通信生だけではなく、通塾生も合わせた中で1位になったんです! まあ、1位になったのはそれきりでしたが(笑)、うれしくて、それから真面目に教材に取り組むようになったんです」

アメリカから帰国後、息子は「将来はMITに行きたい」と言い出した

親子の意識を大きく変えたのは、小4の夏休みの四谷大塚の「アメリカ アイビーリーグ視察団」だった。これは、小4の6月の全統小で全国30位以内に入った子供たちが無料で参加できる研修旅行で、ハーバードやMIT、国連などを10日間かけて巡る。

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優秀な友だちと共に世界一流の大学を見て回る機会などまたとないと、Sくんが小3の冬に母親は勤めていたパート先を辞め、勉強のサポートに徹した。

その甲斐あって、無事、研修旅行に参加したSくんは、帰ってきてから「将来はMITに行きたい」と言い出したほど充実した時間を過ごせたようだ。また、「困っている人の助けになりたい」「社会をよくしたい」といった理由で医師や研究者などを目指している友だちにも大きな刺激を受け、全統小の決勝大会で友だちと会うことを目標に勉強も頑張るようになった。

母親にとっても、このアイビーリーグ視察団で首都圏の教育熱心なママ友と知り合えたことが大きかったという。

「勉強方法や成績の分析の仕方、学校選びのことなど、たくさん教えていただきました。同時に首都圏と地方の教育に関する温度差にも驚きました」

しかし、そういったママ友とのおしゃべりや通信教育を通じて首都圏の教育事情に触れるにつれ、「地元で普通に暮らしていては知り得ないような世界を知れて、それはとても幸福なことだと感じるようになりました」と話す。