母親に「なんで通信教育なんかはじめた」と言って荒れる息子
通常、中学受験において塾通いはマストといっても過言ではない。通信教育だけで最難関の開成に合格したと聞くと驚くが、母親は「もし塾に通わせていたら、逆に息子は中学受験という経験をしようと思わなかったかもしれない」と話す。
なぜなら、好奇心旺盛なSくんはさまざまなことにチャレンジをしたがるタイプで決められた時間に塾に通う、というのが無理な子だったからだ。「自分で好きなようにスケジュールを決めたい子なので、塾に通わせたら中学受験は嫌だと言ったかもしれません」と母親は語る。
特に幼稚園の頃からスポーツが大好きで、サッカーやテニス、フットサル、バドミントンと多種多様な習い事に通っていた。「スポーツと両立したいなら勉強を頑張って終わらせよう」と発破をかけるのが一番モチベーションアップにつながっていたのだ。
また、Sくんにとってスポーツは受験勉強の息抜きでもあった。体を動かすことが大好きなので、勉強の合間の休憩も親子で卓球などをしていたほどだ。
しかし、小6の秋以降、本格的な勉強を自宅で始めてからは休憩時に卓球をする時間すらなくなるほど、ハードな日々が始まった。次第にSくんはストレスをかかえ、「なんで通信教育なんかはじめたんだよ。そうでなければこんな勉強しなくていいのに」と母親を責めるようになったという。
母親は、勉強はハードかもしれないが、レベルの高い勉強ができること自体が恵まれているのだと理解してほしくて何度も話をした。しかし、Sくんのモチベーションは全くあがらず、逆に派手な親子喧嘩に発展する日も多かった。
同じ開成を目指す友だちから受けた大きな刺激
そんな折、小6の11月に全統小の決勝大会への参加が決まり、いい機会とばかりに四谷大塚の先生に親子で面談をお願いした。そして、その面談で、親子はある重大な決意を表明する。
なんと国立大附属小学校から同中学校への内部進学をせずに、地元の中高一貫校の付属中学を第一志望に中学受験をすると決めたのだ。同時に、迷った末に、開成中学と渋谷教育学園渋谷中学校の受験も決めた。
もし、合格しても東京の開成に通うことは現実的ではなかったが、これまで息子が頑張ってきた成果を試す場としてチャレンジさせたいと考えたのだ。
その際、塾の先生から「冬期講習に来てみる?」と誘われたことが母親の背中を押したという。もともと母親には「一度、頑張っているライバルたちの背中を見せたい」という思いがあったのだ。きっと同世代の優秀な友だちの存在は刺激になる、と。その場で冬期講習の申し込みをし、冬休みに東京のホテルに親子で泊まり込んで7日間の講習を受けた。