「大幅な譲歩を伴う政治決断なしに、事態は動かない」

朝日新聞の社説(12月25日付)は、半本だった産経社説とは違い、大きな1本社説である。見出しは「日本と韓国の対立 『最悪』を抜け出すために」だ。冒頭部分ではこう書く。

「国交正常化以降で最悪――。ことし何度指摘されたことか。今回の会談で2人が本当に危機意識を共有したのならば、未来への責任を果たすべきだ」
「互いに大幅な譲歩を伴う政治決断なしに、事態は動かない」
「歴史問題で両政府が反目することは過去にもあったが、今回は規模が違う。政府の対抗措置に連動して、経済、自治体交流の停滞へと連鎖が広がった」

朝日社説は安倍首相と文大統領2人の責任を問いながら、「経済、自治体交流の停滞」を指摘する。

なぜ朝日社説は韓国政府に肩入れするのか

朝日社説はさらに中盤で指摘する。

「両政府とも、相手の政権が代わらない限り、解決は難しいという突き放し感が漂う」
「だが、それは両首脳が偏った隣国観に固執するあまり、柔軟性を欠く外交をしかけ、ナショナリズムをあおる結果になっているからだろう」

「突き放し感」「偏った隣国観」「柔軟性を欠く外交」という言い回しは、どこか鼻に付く。これが朝日社説らしさだと言う読者もいるだろうが、左も右もなく是々非々で、奇をてらうことを好まない沙鴎一歩にはどうしても気になる。

そもそも日本政府と韓国政府に「突き放し感」などあるのだろうか。さらに言えば、「偏った隣国観」を持っているのは文政権である。もちろん「柔軟な外交能力」があるはずがない。

これまで文在寅大統領は「反日種族主義」と称される国民性に頼って、自らの勢力を広げようとしてきた。朝日社説もそのあたりは理解しているはずだが、安倍首相や安倍政権を忌み嫌うあまり、韓国政府に肩入れしてしまったのかもしれない。