会話のズレを未然に防ぐ方法

そこから悩みを紐解いていったところ、本人も納得したようで、1時間後には笑顔で帰っていきました。私がもし「Cさんは自分の神経質な性格を気にしているのだろう」と思い込んで質問していたら、Cさんの悩みを解決することはできなかったでしょう。

相手の「言葉の裏にある本心」を探るには、「それはどういうことですか?」「具体的に言うと何ですか?」といった質問を使って確認することをおすすめします。相手がわざと本心を隠そうなどと思っていなくても、言葉や表現の使い方、とらえ方の差で、大いなる誤解が生まれることは往々にしてあります。意図を一つひとつ確認し続けることで、相手が本当に伝えたいメッセージがつかめるようになります。

または、会話が嚙み合わないように感じた時点で、「そもそもどういう意味でその言葉を使っていますか?」と振り出しに戻る質問をすると、会話のズレを未然に防ぐことができます。

「それってどういう意味だと思う?」

言葉というのは恐ろしいもので、意図せず相手を傷つけてしまうことがあります。心を込めて伝えているつもりでも、相手にとってはプレッシャーとなるケースもあります。代表的なのが、「期待しているよ」という言葉。

極真空手選手のDさんは、たくさんの期待する声に「期待に応えないといけない」というプレッシャーを感じ、しばらく表彰台から遠ざかっていました。そのことを知った私はまず、「期待ってどういう意味だと思う?」とDさんに尋ねました。

するとDさんは、「(期待とは)応えなければいけないもの」「期待してもらったエネルギーの分だけ結果として返さなくてはいけない」と、半ば脅迫観念を持ってとらえていることに気づきました。

Dさんが、期待という言葉をネガティブに受け止めていることを感じた私は、デジタル大辞泉で「期待」の意味を調べてみました。そこには「あることが実現するだろうと望みをかけて待ち受けること。当てにして心待ちにすること」という内容が載っていました。私はその内容をDさんに伝えました。

そのうえで、「Dさんを応援してくれる人たちは、Dさんが『きっと良い結果を出せる』と信じて『期待』という言葉を使っているはずです。決してネガティブな意味で使っているわけではないのです。だからこそ、『期待』という言葉を『あなたを信じている証拠の現れ』だと思って受け取ることができたらどうですか?」と提案しました。