「まぐれ当たり?」といわれたミクシィの戦略

成功している新しいビジネスは往々にして「ズラシ」ています。まぐれ当たりにみえるものでも、構造を分析するとその企業の本質的なアセットを活用している。日本のSNSの草分け的存在であるミクシィの例でみるとよくわかります。

ミクシィは2004年にSNSの「mixi」を世に送り出すと大ヒットとなり、06年には上場をはたします。しかしその後は、08年に日本語版を開設したFacebookなどの多様なSNSの普及とスマホ対応への遅れなどが原因となり業績は停滞。

撮影=三浦 咲恵

そこで起死回生の大ヒットになったのがスマホゲーム「モンスターストライク」(モンスト)でした。13年10月の発売後、売上高は2014年度の121億円から2015年度の1129億円、2016年度の2087億円へと約10倍、20倍と跳ね上がっていきます。

そのため、ミクシィは世間からは最初の「mixi」のブレイクで「一発屋」、次にモンストが当たると「2回もまぐれ当たりを出した」という見られ方をしてきました。でもサービスやゲームのヒット要因をまぐれで片づけていたら、次にヒットを出そうとしたときに運頼みになってしまいます。

組織には必ずDNA、得意技とも呼ぶべき本質的なアセットがあるので再現性を持たせるために見定めるべきです。

「モンスト」は偶然ではなく、必然的なヒットだった

では、ミクシィの本質的なアセットは何でしょうか。実はそれを「ズラシ」て完成したものこそが2回目のヒットになった「モンスト」でした。

mixiが広まった経緯を振り返ると次のようになっています。

ある人が「mixiっていうおもしろいサービスがあるよ」と友人に勧める。

友人もまたmixiの楽しさを知り、別の友人に「これ、面白いからやってみなよ」と勧める。

①②の連鎖によって若者を中心にあっという間に浸透。

これらの要素を抽出すると、ミクシィの最大のアセットは「口コミをマーケティングに活用する」ということでした。口コミを発生させるためには利用者と紹介を受ける人の間にコミュニケーションの機会がなければなりません。だからモンストは「携帯端末を持ち寄り実際に会って最大4人まで遊べる」というゲームになった。偶然ではなく、ズラシ戦略だったのです。

撮影=三浦 咲恵

モンストのように口コミで広がるゲームは時間軸とともにユーザー数が増えていくことが特徴です。これはプロモーションによってリリース直後がピークになるオンラインゲームとは逆の軌道になります。

モンストのリリース直後の月商は1000万円程度でしたが、おおむね7倍ペースで推移しました。16年に月商150億円前後をコンスタントにたたき出すと加速度的に広まっていきました。