外国人の入浴を一律に拒否した銭湯をめぐる裁判例
ここで、銭湯側が外国人に対して一律に入浴拒否をしたという事案において、拒否された外国人が銭湯側に対して損害賠償請求をしたという裁判例がありますので、ご紹介します。
銭湯側としては、土足で入場する、浴室に酒を持ち込み、飲酒しながら大声で騒ぐ、体に石けんをつけたまま浴槽に入るなどの迷惑行為をする外国人の入浴客が多く、他の利用者からの苦情が相次いだことから、外国人の入浴を一律に禁止したものであり、営業の自由に基づく措置であるから適法であると主張して争いました。
しかし、裁判所は、公衆浴場の公共性に照らすと、銭湯側は、可能な限りの努力をもって、マナー違反者を指導したり、指導に従わない場合にはマナー違反者を退場させたりするなどの方法を実行すべきであり、当該方法が容易でないからといって、安易にすべての外国人の利用を一律に拒否するのは明らかに合理性を欠くものというべきである、としたうえで、外国人一律入浴拒否の方法によってなされた入浴拒否は、不合理な差別であって、社会的に許容しうる限度を超えているものといえるから、違法であって不法行為にあたるとの判断をしました。
一律に禁止するのではなく、柔軟な対応を
そして、結論としては、原告1人あたり100万円の損害賠償請求が認められました(札幌地裁平成14年11月11日判決)。
入れ墨客の入浴拒否についての裁判例はまだありませんが、上記札幌地裁の考え方が参考になるかもしれません。銭湯側としても、入れ墨客を一律に入浴拒否するという対応をとるのではなく、特定の曜日や時間帯に限ったり、入れ墨をシールで隠してもらえれば入浴を認めるなど、入れ墨客に対する配慮をしているのであれば、銭湯側の責任が認められない可能性は高いとは思います。