入れ墨は公衆浴場法4条及び5条に抵触しないとされた
しかしながら、入れ墨をしているだけでは、伝染病にかかっているとは言えませんので、公衆浴場法4条に基づいて入れ墨客の入浴を拒否することはできません。
それでは、入れ墨客が「浴槽内を著しく不潔にし、公衆衛生に害を及ぼす虞のある行為」をする可能性があるとして、公衆浴場法5条に基づき、入浴を拒否することができるのでしょうか。
平成29年2月21日、政府は、民進党(当時)の初鹿明博衆議院議員からの入れ墨がある人の公衆浴場での入浴に関する質問に対して、下記のような回答(閣議決定)をしています。
銭湯側の判断で入れ墨客を拒否しているところもある
すなわち、銭湯側は入れ墨がある客に対して、入れ墨があるという理由だけでは入浴を拒否することができないというのが政府の考え方です。
むしろ、政府としては、来年のオリンピックに向けて海外からの旅行客の増加が見込まれ、旅行客の中には入れ墨(タトゥー)をしている人も多くいることが予想されることから、日本温泉協会などに対して、入れ墨をしていることだけを理由に入浴を拒否するのは適切ではない旨の通知をしているくらいです。
しかしながら、入れ墨は暴力団の象徴ですので、銭湯を利用する客の中には、入れ墨客に対して恐怖心を抱き、同じお風呂には入りたくないと思う人も少なくはないと思います。
そのため、入れ墨をしていない客に対する配慮から、銭湯側の判断で、入れ墨客に対しては入浴を拒否するという対応をとっている銭湯もあるそうです。
上記のとおり、銭湯側が、入れ墨客に対して入れ墨をしているという理由だけで入浴を拒否することは法律に違反する可能性がありますので、入れ墨客から不当な入浴拒否をされたことを理由に慰謝料の支払いを求められて裁判を起こされた場合には、銭湯側が敗訴する可能性はあると思います。