恐怖心にかられた正義は、果たして正義といえるのか

「僕らが生きる現実自体、嘘と本当が二重写しになっている。それならもしこの世界が贋物で、本当の世界が別にあったら、人はどのような行動をとるのか」

町田康さんは最新作『宿屋めぐり』でそんな〈贋の世界〉を遍歴する男の姿を描いた。

<strong>町田 康●まちだ・こう</strong><br>高校時代から音楽活動を始め、81年バンド「INU」で『メシ喰うな』を発表。96年処女小説『くっすん大黒』でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞受賞。2000年『きれぎれ』で芥川賞受賞。05年『告白』で谷崎潤一郎賞受賞。このほか愛猫をテーマにした軽妙なエッセイでも人気を博す。「最近はパンクロッカーでさえふざけたことがいえない。息苦しさを感じます」
町田 康●まちだ・こう
高校時代から音楽活動を始め、81年バンド「INU」で『メシ喰うな』を発表。96年処女小説『くっすん大黒』でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞受賞。2000年『きれぎれ』で芥川賞受賞。05年『告白』で谷崎潤一郎賞受賞。このほか愛猫をテーマにした軽妙なエッセイでも人気を博す。「最近はパンクロッカーでさえふざけたことがいえない。息苦しさを感じます」

主人公・鋤名彦名は「主」の命を受け、大刀を大権現に奉納する旅に出る。だがその道中、〈白いくにゅくにゅ〉に吸い込まれ、嘘つきや詐欺師のような人間ばかりが跋ばっ扈こする〈贋の世界〉から出られなくなる。

(伊藤菜衣子=撮影)