もちろん、一口に投資ファンドといっても、投資先企業に対するスタンスはそれぞれ異なる。ファンドにより経営再建を実現した企業が、再上場を果たすといった事例も出てきている。
07年8月に再上場したキトー。工場内での荷揚げ機などを手がける同社は、経営危機に陥った03年、米投資ファンドのカーライル・グループによる買収を受け入れる形で上場を廃止。以後、ファンド傘下で合理化や国際展開を図り、経営を改善させたことで再上場となった。
RHJも「デノン」や「マランツ」ブランドの音響メーカー、D&M HDは、別の投資ファンドに売却しているが、自動車部品の旭テックやユーシン株を持ち続けているように、投資スタンスを変えているようだ。
投資ファンドの株買い占めが、結果的に業界再編を後押しする例もある。明星食品が日清食品HDの傘下に入ったのは、明星食品が前述のスティールによる株買い占めを受け、日清食品が救済に乗り出した側面が強い。阪神電気鉄道と阪急HDの経営統合も、いわゆる村上ファンドの攻勢から逃れる意味合いが強かった。
世界的不況で、資金繰りに逼迫している事業会社は多い。経営不振や破綻組も増えることは確実な情勢だ。優良企業や資産リッチ企業が株安で時価総額が低下、手頃な金額で買収が可能というケースも出てくるだろう。
不況期こそ、投資ファンドの出番が増える局面ともいえるわけで、投資ファンドの動きからは目が離せなくなっている。ある意味で、日本最大の投資ファンドは総合商社だ。各社とも連結決算に組み込む子会社や関連会社は数百社に及び、入れ替えも少なくない。総合商社の動きも要チェックだ。
(ライヴ・アート=図版作成)