不況期こそ投資ファンドの出番

投資ファンドは基本的に、投資額を上回る金額で投資先企業・事業を売却するか、株式上場にともなう上場益を得るのが出口戦略。その出口戦略が描けない案件も目立つようになってきた。

前述の野村プリンシパルは、外食のすかいらーくやテーマパークのハウステンボスの再建を手がけているが、追加投資に追われるばかり。野村HDグループは足利銀行の再建課題も抱えている。

ゴールドマンにしてもゼネコンのフジタに400億円超を投資し、上場を廃止させているが出口戦略は不透明。ゴールドマンは「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」のUSJにも600億円を超える再投資で上場を廃止させる。

ラディアHD(旧グッドウィル・グループ)には、モルガン・スタンレーとサーベラスが投資をしているが、人材派遣会社の再建は容易ではない。

出口が見えないといえば、米系投資ファンドのスティール・パートナーズが抱える案件が代表だ。早い時期に決着した明星食品やブルドックソースでは回収益を確保したことは間違いないが、株式を買い進めたアデランスHDやサッポロHDなどはこう着状態。アデランスやサッポロの株式取得に要した投資額は、それぞれ300億円前後。日清食品HDでは800億円の投資が確認されている。

投資先企業への揺さぶりも空回り、所有株式を売却しようにも、現在の株安局面では、損失を出す可能性が高い、という状況にあるといっていいだろう。

英ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)対Jパワー(電源開発)、羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデング対豪マッコーリー……。TCIによるJパワー株の買い増しを巡っては、政府は法律に基づいて中止命令を発令したこともあり、JパワーがTCIから株の買い戻しをすることで決着している。