政治部記者にとって菅氏は「絶対的存在」ではなくなった
もう1点、見逃せない点がある。記者団の追及が格段に厳しくなったのだ。官房長官の記者会見に出席するのは内閣記者会に所属する政治部記者が中心だ。永田町にも霞が関にもにらみを利かせ、マスコミ操縦術にもたける菅氏に対し、政治部記者、特に「番記者」と呼ばれる菅氏担当の記者たちは気後れしていた。不用意な質問をして不興を買うと、情報をもらえなくなるという恐怖心があったのだ。
数カ月前まで菅氏の会見というと、東京新聞社会部の望月衣塑子記者が厳しい質問を菅氏にぶつけて注目を集めた。それは番記者たちが菅氏のご機嫌を損ねないような「緩い」質問をしていたから、目立ったという側面がある。
だが、今は違う。朝日、毎日、東京など政権に批判的な新聞社だけでなく民放テレビ局なども競い合うように菅氏に厳しい質問をぶつける。記者たちは「桜を見る会」の問題が、これまでのスキャンダルとは次元が違うことを感じ取っているのだ。政治部記者にとって菅氏が「絶対的存在」ではなくなっている。
政権寄りの論調が多い産経新聞でさえ、8日の朝刊で「鉄壁答弁崩れ菅長官に綻び」という記事で「菅長官の答弁が変遷するなど対応のまずさが目立ち、政権の強みとされてきた危機管理の綻びを印象づけた」と辛口の論評をしている。
安倍内閣を「全く支持できない」が急増している
「桜を見る会」では、安倍氏が火だるまになり、政権を支えてきた菅氏のメッキがはがれた。菅氏を「ポスト安倍のナンバーワン候補」という声は消え、辞任論さえもくすぶる。
JNNが12月7、8の両日に行った世論調査で安倍内閣の支持率は前回比5.2ポイント下落し49.1%。5割を割り込んだ。
「支持しない」層を分析すると「あまり支持できない」は31.0%で1.5ポイント減っているのに対し「全く支持できない」が16.8%で7ポイントも上がった。「全く支持できない」層は今後、支持に戻ることはないだろう。このデータからも「桜を見る会」は安倍内閣の屋台骨を揺るがしていることが分かる。