これからは「スぺシャリスト」の時代

刀を使うゾロに、狙撃がうまいウソップ、航海術にけているナミ、料理人のサンジ、医者のチョッパー等々。それぞれ得意な分野を持った人(動物?)がチームをつくり、ルフィ率いる海賊団を構成しています。

オールラウンダー一人が活躍する昔の漫画と、スペシャリストがチームを組んで活躍する今の漫画。その違いは、まさに日本の社会の移り変わりとぴったりと呼応しているように思います。

ボクも、受け持ったクラスを一つのチームと考えていますが、オールラウンダーとそれに頼る脇役という構図ではなく、スペシャリストたちの集団になってほしいと願っています。

それに、子どもたちは、誰もがスペシャリストになる素質を持っているので、それを見逃さずにしっかりと見つけ、育ててあげるのが教師の役割だと思うのです。

からかわれていた子が「エース」になった

以前、受け持ったクラスに、背が高く、少しぽっちゃりした子がいました。そんなに太ってはいないのに、ときどき「ぽっちゃり」と言われてからかわれていたのです。ボクは、そんな彼を「給食エース」と名づけました。

ボクのクラスでは、給食を残さずに食べることを一つの約束にしています。そのため、全員が食べきれるように、最初に盛りつけるときは少なめに盛っています。そうすると、全員が残さずに食べきることはできるのですが、当然、クラス分の給食自体はたくさん余ることになります。それを、まだ食べられる子がおかわりをして減らすのです。

そんなとき、誰よりも活躍するのが「給食エース」でした。

彼は体が大きく、ほかのみんなよりたくさん食べられるので、必ず、毎回おかわりをしてくれていました。それでもまだ余っているときは、ボクは彼に「おい、エース、まだいけるか?」と声をかけます。まるで野球の監督が、マウンドにいる投手に向かって伝令を出すように。すると彼は「任せて」といった表情で席を立ちます。それが、たとえ4杯目のおかわりであっても、みんなの期待に応えるためにおかわりに向かうのです。

そんな「給食エース」の姿を見て、クラスのみんなから拍手が沸き起こります。その瞬間、彼はクラスのヒーローになり、彼のことをからかっていた子たちも、羨望せんぼう眼差まなざしで彼を見つめるようになりました。