一点突破の自信が次への布石となる
彼を「給食エース」と呼んだことで、彼自身にもいい影響がいくつもありました。まずは自分に自信を持ってくれたということ。1学期が終わるとき、彼はボクの通知表に「『給食エース』にしてくれて、ありがとう」と書いてくれました。
でも、彼のすごいところはそれだけではなかったのです。
「給食エース」と呼ばれて自分に自信を持てたことが影響したのか、漢字テストや学習ノートなど、勉強でもぐんぐん成績が上がっていきました。どんな分野のことでも、一つのことで突き抜けて成功を収めると、その自信がほかのことも引っ張り上げてくれる。「給食エース」はそれを体現してくれたのです。
ある1点を突破したことによる自信によって、きっと2点目、3点目も続くはずだとボクは信じています。なぜなら、何か一つを成し遂げたという「成功体験」によって自分の中に「自信」が生まれ、その自信によって、もっとチャレンジしたい、もっと成功したいという「行動」となって表れるから。
少し変な例えかもしれませんが、恋人が初めて肉じゃがをつくってくれたとき、多少のお世辞を含んでいたとしても「おいしい」と言うことがありますよね。
すると、次はカレーライスをつくってくれたり、さらにはシチューだったり、最終的にはビーフストロガノフなどの凝った料理までつくってくれるようになるかもしれません。
でも、最初に肉じゃがをつくってくれたときに「おいしい」と言わなかったら、きっと次のデートからは外食ばかりになってしまうはずです。肉じゃががおいしくつくれたという一点突破の自信が、料理をつくるモチベーションにつながり、次々と新たな料理に挑戦してくれるようになるのです。
子どもでも大人顔負けの特技がある
「給食エース」のほかにも、「鉄道ダリン」という、一点突破でスターになった子がいます。彼はとにかく鉄道の車内アナウンスが好きで、いつでもどこでもブツブツと練習しているので、バカにされていた時期があったそうです。
でも、彼には誰にも負けない特技があり、ある日、クラスの女の子がその特技の動画を撮ってボクのところに持ってきてくれたのです。そこには、電車の車内アナウンスを完璧に耳コピして、得意そうに披露している彼の姿が映っていました。しかも、英語のアナウンスまで完璧に真似をして。ボクは、その動画を見て、あまりのクオリティの高さに大喜びして、クラスのみんなに紹介しました。
この特技をきっかけに、彼はクラスのスターへの階段を上り始めました。ボクはこのアナウンスが大好きで、今では本人に許可をもらって、講演会のときに皆さんに聞いてもらっています。