ニューハーフ嬢がこの20年で控えめに見ても10倍に急増した

畑野さんは、インターネット上に見られる「ニューハーフ風俗」の広告を収集し、そこに従事している人の数が関東より北の地域だけで(あまりに多くて西日本まで集計できなかった)、延べ2000人になることを明らかにした。ただ、かなり重複しているので、実数は1600人ほどと推定している。

私は、以前、同種の調査を行い、1999年代段階で、東京都内でセックスワークに従事するニューハーフを90~100人ほどと推定したことがある。この数字は、1952年調査の都内の女装男娼の推定数とほぼ同じだった。

つまり、調査範囲がやや異なるものの、20世紀後半にほとんど増加が見られなかったニューハーフ風俗の従事者が、21世紀に入って急増したことを示している。その増加率は控えめに見て10倍、おそらく10数倍と思われる。

今は竿あり・玉ありのニューハーフ嬢が半数

さらに興味深いデータがある。畑野さんの調査による従事者の身体状況は、性別適合手術済(ペニス&睾丸除去+造膣)が3%、竿あり・玉なし(ペニス有り、睾丸除去、女性ホルモン投与)14%、竿あり・玉あり(ペニス・睾丸あり、女性ホルモン投与)51%、男性のまま(竿・睾丸あり、女性ホルモン投与せず)31%、不明1%となっている。

20世紀末段階のニューハーフ風俗の主流は竿あり・玉なし(有り無し)で、竿あり・玉あり(有り有り)は、それに比べて少なかった。それが大きく逆転している。以前は有り無しにしても有り有りにしても、女性ホルモン投与は必須だった。ところが、現状は、手術はもちろん女性ホルモンも投与していないほぼ男性のままの身体(脱毛はしているかもしれない)の人が31%もいる。

私が知っている20世紀末の状況では、男性のままの身体では、ニューハーフ風俗では使いものにならなかった。せめて、乳房が膨らんでないことには……。

さらに、畑野さんの報告で驚愕したのは、ニューハーフ風俗の広告に、ニューハーフのペニスのサイズ(長さ)が表記されているという話だった。中には「20cm超級」というのも……。あり得ない。いや、あり得ないのはサイズではなく、ペニスのサイズをわざわざ記すことが。

これはいったいどうしたことだろう? 以下、いたってマイナーな世界の話だが、この大きな変化について、私なりの考えを述べてみたい。