沈黙は恐れるものではなく、使い方次第で「場」や「相手」をコントロールできる技だと知っておこう。
ボロを出さない、弱みを見せない、弁護士流「沈黙の会話術」
お笑い芸人のように面白いトークができるようになりたい。物事を論理的に淀みなくスラスラと話したい。饒舌の時代に生きる私たちは、ついそう考えてしまう。
豊富な語彙で巧みに話すイメージのある弁護士という職業だが、谷原誠弁護士は、「会話や交渉が上手な人は、むしろ沈黙をうまく使いこなしている」と指摘する。
「実は情報量よりも沈黙や間をどう効果的に使うかが会話力アップのポイントなのです。言葉にしないこと、沈黙することで、よいコミュニケーションがとれることもあるのです」(谷原弁護士、以下同)
わかりやすいのがスピーチやプレゼンテーションといった一対多の場合。慣れない人は、情報を詰め込み、早口になりがち。しかも、無言の時間が不安なので、「え~」とか「あの~」と意味のない音を連発する。いわば、そのトークは余白のない絵、改行のない文章だ。これでは相手に伝わらない。
「カーネギーの『話し方入門』でも、話の前後に沈黙を置くことを推奨しています。沈黙で聞く人の注意を引きつけてから、重要なことを話す。逆に重要なことを言ってしばらく黙る。スティーブ・ジョブズやオバマ前大統領などスピーチの達人、売れっ子芸人、名司会者などのパフォーマンスを思い浮かべればわかるように、話の上手な人は、タイミングのいいところで間を置き、聴衆を引きつけてから話を展開しています」