自民党総裁任期は2021年9月までだが…
女房役として安倍首相を支えてきた菅義偉官房長官は11月19日の記者会見で「やるべきことを明確に掲げ、政治主導で政策に取り組んできた」と述べ、経済再生や外交・安全保障の再構築などを主な成果に挙げた。
安倍首相も、通算在職日数が明治・大正時代の桂太郎首相を抜いて憲政史上最長となった11月20日、政治課題について「デフレからの脱却、少子高齢化への挑戦、戦後日本外交の総決算、その先には憲法改正もある」と首相官邸で記者団の質問に答えた。
さらにこれまでの政権を振り返り、「深い反省の上に政治を安定させるため、日々全力を尽くしてきた」とも話した。
安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月までだ。自民党は総裁を首相とする慣例があるため、総裁の任期を終えた場合、首相の任期もそこで終わる。安倍首相は「(その時点まで)薄氷を踏む思いで初心を忘れず、全身全霊をもって政策課題に取り組んでいきたい」とも語った。
経済的に豊かになったのは、大企業と一部の富裕層だけ
果たして経済再生や外交・安全保障の再構築が成功したと言えるのか。確かにアベノミクスの「3本の矢」や「1億総活躍社会」といった政策看板を掲げ、実際に株価や有効求人倍率の指標は上がった。しかし、私たち国民の生活は本当に豊かになっただろうか。
経済的に豊かになったのは、大企業と一部の富裕層だけだ。賃金は伸び悩み、大半の国民はアベノミクスの恩恵を受けてはいない。経済格差は広がるばかりである。
外交・安全保障にしても、たとえば日韓関係をギクシャクさせ、北朝鮮や中国、ロシアを喜ばせている。対ロシアの北方領土問題では「4島は日本固有の領土」という主張も消えた。
すべて長期政権の緩みや驕り、歪みから起きている
「もり・かけ問題」と批判された森友学園や加計学園の不祥事は、安倍首相と周辺との政治的癒着に注目が集まった。今年9月の内閣改造では、初入閣した2人の主要閣僚が政治とカネの疑惑で辞任した。内閣改造から1カ月半で経産相と法相が相次いで辞任する異例の事態だった。この顚末については、11月1日付の記事「なぜ安倍内閣の閣僚たちは次々と辞任するのか」に書いた。
大学入学共通テストで導入を予定していた英語の民間試験をめぐっては、文科相の「身の丈発言」の影響もあり、導入延期に追い込まれた。さらに「桜を見る会」の問題では、地元支援者を多数招待するなど安倍首相の公私混同ぶりが明らかになっている。11月16日付の記事「読売も『襟を正せ』となじる『桜を見る会』の節度」でも書いた。
一連の問題は長期政権の緩みや驕り、歪みが原因だろう。安倍首相はこれをどこまで自覚しているのか、疑問である。安倍首相は「深い反省の上に政治を安定させるため、日々全力を尽くしてきた」と語るが、深い反省があれば緩み、驕ることなどないはずだ。