19年10月中旬、同タワーマンションに向かうと、エントランス前にはカメラを構えた取材陣が複数。外出する住人を追いかけながら質問を浴びせていたが、迷惑そうな顔で無視をする人がほとんどだった。プレジデント誌取材班も知人をつてに同マンション住人へ取材を申し込むも、「マスコミ対応には災害対策本部を通すように通達がありました」と断られてしまった。管理側も不要な情報を漏らさぬよう、気を使っているようだ。

渦中のタワマンへ、内見に行ってきた

同マンション内ではいったい何が起きているのだろうか。プレジデント誌取材班は、この渦中に同マンションの内見をしたという男性に当時の話を伺った。

「家賃23万3000円、管理費1万5000円の賃貸契約希望で内見に行きました。今回の災害で家賃が下がるのではないかと思い、すぐに連絡をしたのですが、2番手での応募でした。台風でタワーマンションの脆弱さが見えた先月でも、賃貸の人気状況は普段と変わらないそうです」

男性が内見へ行った当日は、水質調査が済んでいなかったことから、飲み水としての水道水の利用は禁止されていたものの、水も電気も復旧し、エレベーターも最上階まで動いていた。しかし一時は、水も電気も使えず、排泄にいたっては各フロアに設置された簡易式トイレを使用するという状況が続き、住人のフラストレーションも溜まっていた。

復旧作業中の地下2階(左)。各階に設置された簡易式トイレ(右)。(ともに情報提供者撮影)

「こんな状況で家賃を払う義務はあるのか」と苦情を出す賃貸居住者も。だが、あくまで居住者とオーナー個人間の問題であるということでデベロッパーの三井不動産は干渉せず。また、オーナーの多くは中国人投資家だという。そんなこともあり、十分な対応がなされず、トラブルに発展するケースが多数あったようだ。

内見をした男性によると、地下2階にある駐車場でも大きな問題が起きていたという。以下、男性が内見時に担当者から受けた説明だ。

「現在、平面駐車場の車は動かせる状況にありますが、住人同士の公平性を保つため、立体駐車場、平面駐車場ともに使用禁止にしています。また、住人には“数カ月先”まで駐車場は使えないという説明をしていますが、ここだけの話、1年近く先になるのではという話も管理側では出ているんです」

同マンション、ホームページによると駐車場代は月額1万8000円。こちらもあくまで居住者とオーナー個人間の問題とのことで、使用禁止という状況でありながら料金を支払っている住人もいるという。

「しかし、常識的に考えて、支払う必要はありませんので、三井不動産から返金というかたちになるのではと考えられます。購入して住まわれている方に関しては、駐車場代の支払いは原則発生しています」(担当者)

さらに今回は、地下2階は浸水している。ホームページには、『雨天でもぬれることはありません』と明記されているものの、「お気の毒ではありますが、車が故障している可能性もゼロではありません。しかし、駐車場は使用禁止なのでその故障についても確認ができていないというのが現状です」と担当者は話した。