日本のサウナは間違っていた?
ただし、当時のサウナはまだまだ知る人ぞ知る存在で、広く日本国民に知られるようになったのは、1964年の東京五輪開催時だった。フィンランドの選手が、選手村にサウナを持ち込んだことにメディアが注目してニュースとなり、一気に人口に膾炙、1966年には渋谷にフィンランドサウナの1号店「スカンディナビア・クラブ」が誕生し、徐々に、サウナ施設が増えていった。
しかしながら、フィンランド式サウナが日本に導入されるにあたり、ひとつの誤りがあった。「ロウリュ」をすることができず、サウナ室内の温度が90~100℃近くと熱く、湿度も極端に低いドライなサウナが、一般的な日本のサウナとして定着してしまったのである。
サウナの魂「ロウリュ」が湿度を上げる
フィンランドのサウナの温度は75~85℃程度とそこまでに高くない。さらにそこにロウリュを行って湿度を高める。
ロウリュとは、ストーブ上のサウナストーンに水をかけ蒸気を発生させること、ならびに蒸気そのもののことである。カンカンに熱せられたサウナストーンに水をかけると「ジューッ」という音とともに瞬時に蒸気が発生する。たちまちサウナ室内には蒸気が立ち込め、天井にぶつかってサウナ室全体の空気を動かし、じわぁっと全身から汗が噴き出て、身体の芯から温まる。
フィンランドでは「ロウリュ(蒸気)にはサウナの魂あり」ということわざがあり、ほぼすべてのサウナでロウリュができるようになっている。
しかし日本ではロウリュの部分が抜け落ちてサウナが伝わってしまったのか、あるいは水をかけると壊れるタイプのサウナストーブだったのか、ロウリュすることのできるマイルドでウェットなサウナはほとんどなかった。
「とにかく熱くすればいいんでしょ?」というカラカラのオーブントースターのようなサウナが世に溢れ、サウナの中で呼吸をすれば、熱く乾いた空気がのどを傷める。
そして、直感的に身体に悪そうな感じがして「サウナ=我慢」「サウナ=苦手」「サウナ=嫌い」という印象が残り、もう二度とサウナに近寄らなくなってしまったのだ。