保険診療は融通がきかず結果的に高くつくケースも

保険診療では各疾患に応じて検査や治療の内容が事細かに決められており、同日に複数の検査を行えないなどの制限があります。治療行為が保険診療となるかどうかは、医師の書いた「レセプト」というものを元に、支払基金という機関が最終的に可否を決める仕組みとなっています。

そのため、保険診療では胃カメラと大腸カメラを同日に行えなかったり、他の性病が発見されなければHIV検査を受けることができなかったりといった制限があります。

仕事を何日にもわたって休み病院に通うよりも、自由診療で1日に複数の検査を受けた方が時間もお金も節約できるというケースもあるでしょう。

また、保険診療では、安価な検査から段階的に行うことになっているため、初めから精度の高い最新式の検査を受けたい、徹底的に病気のリスクがないか確かめたいということであれば、自由診療を選択した方が良いかもしれません。

例えば乳がん検査で最も精度が高いのは、造影の磁気共鳴画像装置(MRI)検査です。

しかし、「胸にしこりがある」という自覚症状を訴えて保険診療で受診した患者の場合、まず視触診を行い、その後にマンモグラフィーや超音波などの安価な検査を順に行うことになります。その上で、必要と認められればMRI検査を受けることができるというのが通常の診療となります。

保険診療の3割負担で順を追っていくつもの検査を受ける場合と、自由診療の10割で初めから高額な検査を1つ受ける場合とでは、結果として後者の方が安価に済む可能性もあります。

若い医師が多いところは良い医療を行っている確率が高い

これからは個別化医療の時代です。現在の日本の制度では保険診療と自由診療を組み合わせることはできないため、初診の前に、医療保険制度についての知識をしっかり持った上で、保険診療と自由診療のどちらが自分に適しているのか、判断する必要が出てくるでしょう。

また、医療機関によって有する設備や機材、技術が異なるため、どの医療機関を利用すればよりクオリティの高い医療行為を受けることができるのか、見極めることをおすすめします。例えば同じCTスキャンでも、機材によって精度が全く異なることもあります。

新しい機材を導入していて受診者数の多い病院の方が、情報が新しく、保険診療のなかでも新しい医療を受けられる可能性があるでしょう。

また、向上心の高い若い医師ほど、良い環境で勉強して実力をつけたいという意識があります。10年目くらいの医師は、身に付けた知識を活用する術を知っている世代になります。したがって、10年目前後のある程度若い医師が多く在籍している病院というのも病院選びの一つの基準となるでしょう。

保険制度や医療について適切な知識を持つことで、より上質な医療行為をおトクに受けることができるといえるのではないでしょうか。

(構成=梁 観児)
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