オフィスの「性能」がいいと、社員もいい影響を受ける
国土交通省は今年度から、労働者の健康増進、知的生産性が向上するオフィスを「ウェルネスオフィス」として認証する取り組みをスタートした。来年早々に認証された企業が順次発表されていく予定だ。
認証事業に関わるスマートウェルネスオフィス研究委員会委員長で東京大学名誉教授の村上周三氏(IBEC理事長)はこう話す。
「今後は、働く人のために快適な執務環境を整えることが企業の競争力・ブランド価値につながります。そこに関心を払わない企業は、人材確保を含めて競争から脱落していくでしょう」
今日、企業の長期的成長のためにはESG投資が必要、というのが世界的潮流である。ESGとはE=環境(Environment)、S=社会(Social)、G=企業統治(Governance)の略。もはやオフィスは単なる“働く場の供給”だけではなく、“投資対象”としてその「質」も問われているのだ。不動産そのものの環境負荷の低減、健康性・快適性に優れたオフィスへの注目が高まっている。
それでは本当に性能のいいオフィスに入所している社員は、良い影響を受けているのだろうか。
「心身ともに健康で、作業効率が有意に高い」
慶應義塾大学理工学部教授の伊香賀俊治氏は昨年、さまざまな企業で働く社員3500人の「オフィス」「社員の自宅」「社員が住む自宅周辺の街並み」の3つを調査した。その結果「オフィス、自宅、自宅周辺の街並みが良い社員は心身ともに健康で、作業効率が有意に高い」ことがたしかめられた。
「良いオフィスとは、たとえば天井が高く空間がゆったりしていること、室内に緑があったり外の景色が見えること、リフレッシュスペースが充実しているなどですね。いい街並みとはゴミ置き場などの衛生状態が良く、遊歩道、公園といった体を動かせる場所があることなどが一例として挙げられます。自宅は断熱効果が高く、ゆったり眠れて疲れがとれやすい環境が大切でしょう」