オフィス環境で「心身の健康状態」をグラフ化すると…

図1の左上の図を見てほしい。オフィス環境の質によって4つのグループに分け、それぞれの社員の心身の健康状態をグラフ化したものだ。産業医科大学公衆衛生学教室が開発した7つの質問項目に答えると、その人の労働機能障害(「働く力」を阻害する身体的あるいは精神的な病)が評価できるとされ、総得点数が高いほど心身の状態が悪いことになる。

※:伊香賀俊治・白石靖幸「CASBEE-OHCの概要とその活用」日本サステナブル建築協会スマートウェルネスオフィス研究委員会 CASBBEE健康チェックリスト開発部会研究成果報告(2019.2)

「向かって右側に向かうほどオフィス健康チェックリストの得点が高い、良質なオフィスになるのですが、それに伴って社員の心身の状態を表す点数が低い、つまり社員の健康状態が良くなっているのが一目瞭然です。すべての群間において、有意差が出ている。

黄色のゾーンは軽度労働機能障害で、オレンジは中等度、赤は産業医の介入が必要とされるほど状態が悪いのですが、最もオフィス環境の悪いところで働く人は(向かって左側の棒グラフ)、その平均値がすでにオレンジに差し掛かっている。一方でオフィス環境が良いと、ほとんどの人が『問題なし』の白色ゾーンにいることがわかります」(同)

「閉めっぱなしのブラインド」を開けるだけでも効果アリ

心身の健康だけでなく、「主観作業効率」という指標もある(図1の右上)。自分の最大パフォーマンスを100とした時、今、「どれくらいの能力を発揮できているか」という問いに各社員が答えるものだ。これも、オフィスの環境が良いほど、有意に主観的作業能率が良いという結果が出ている。

WFun(産業医大プレゼンティーズム測定調査票)
図表1と見比べると、オフィス環境が良好であるほど、黄色ゾーン「軽度の労働機能障害」にかかる割合が少なくなっていることがわかる。

良いオフィス環境を具体的に解説しよう。

国土交通省のホームページによれば、「天井高さを確保した開放的な執務空間」「自然光を積極的に取り入れた執務室」「自然光を取り込み清潔感のあるトイレ・パウダールーム」「執務室内に設けられたカフェテリア」「屋外でくつろぐことができる緑化された空間」など、建物として健康性・快適性に優れていることを評価基準としている。

「ブラインドを閉めっぱなしという企業が日本では多いのですが、日中に日光を取り入れられないのは心身の健康に良くないですね。しかし自然光を取り入れるには、同時に日よけ対策などもしなければなりません。

また、社食を含めたリフレッシュスペースの充実や、ほかの部署とのコミュニケーションが活発になるような建築的な仕掛けがしてあると、オフィスの高評価につながります」(同)

具体的には他部署へアクセスしやすい階段、廊下や階段近くで社員同士が気軽に打ち合わせできる空間などが挙げられる。