また、母の浪費癖は食費にも表れている。スーパーマーケットに買い出しに行くと、無駄なものを買い込んでしまい、結局食べきれずに捨ててしまうことが多い。ペットのために常に冷暖房をつけっぱなしにしている。ほとんど年金だけに頼っている収入状況も問題ではあるが、とにかく母の金銭感覚には問題があるように思える。とはいえ、経済的には家計を支えられていない原さん。そんな負い目もあって、家計の管理にはあまり口出しができない。

「母は最近独り言が増えてきました。ネットショッピングへのハマリ方も異常ですし、認知症になる日も近いのではないかと悩んでいます」

親の年金も、まとめて子が管理しよう

このままではどこかで家を売る日がやってくるのは目に見えている。たとえ家を売り、まとまった現金が入ったとしても、いまのような浪費を続けているようでは、すぐにお金は底をついてしまうだろう。そうなれば残される道は生活保護。この家計にはそのような結末が待っていると言わざるをえない。

原さんの言うとおり、母の趣味費が家計を圧迫しているのは一目瞭然ではあるが、ほかにも抑えられるポイントはある。本来、家があってふたり暮らしの場合、贅沢をしなければ毎月20万円もあれば貯金ができてもいいくらい。まずは食費だ。ふたり暮らしの場合、4万円程度には抑えられるはず。また、水道光熱費もいくらペットのためとはいえ、高すぎる。保険も低収入の家庭なら、最低限の保障ができていれば十分だ。

問題の母の趣味費だが、収入に見合わない額を使ってしまっている。ネットショッピングに至っては依存症レベルで、放置しておけばさらにエスカレートしていくことだろう。そういった現状や独り言が増えたこともあり、原さんは認知症を心配しているようだが、年を取れば誰でも独り言は増えるもの。犬の散歩も母がしているとのことで体は元気なようだし、介護認定に関してはまだ先の話だろう。

たしかにこの家計で母が施設にでも入るとなれば現実はかなり厳しいものになるが、現段階では原さんは自分のことを心配するほうが優先であるように思える。働きに出られないほどの怪我ならば、まずは障害者手帳や障害年金の申請をすること。まずは自分の収入を確保したうえで、家計のことを考えよう。

客観的に原家を見てみると、原さんは将来に危機感を抱いているようだが、母にはそれがない。そのため、経済的には支えられなくても精神的な面で母を支えてあげるべきだ。母はお金を使えない状況に置いてあげないといけないくらいに浪費癖があるため、父の遺族年金も母の年金もまとめて原さんが管理するように、家計主の世代交代をすべきである。

藤川 太(ふじかわ・ふとし)
フィナンシャルプランナー
生活デザイン代表取締役。2001年に家計の見直し相談センターを設立以来、2万世帯を超える家計診断を行ってきた。『やっぱりサラリーマンは2度破産する』など著書多数。