人生100年時代の娯楽にもぴったり

さて、政治の問題はさておき、今回はその韓国ドラマが、来るべき人生100年時代の娯楽にぴったりだという話をしたいと思います。そもそもなぜ韓国ドラマはこんなに人気なのでしょうか? それは韓国ドラマの特徴をいくつか振り返ってみればわかるでしょう。

まず韓国ドラマはストーリーが面白いのです。恋愛一つとっても、男同士の嫉妬や裏切り、何より胸キュンのピュアラブ、複雑な四角関係、意外な運命……もう惹きつけられる要素満載です。また、恋愛ものに限らず、ストーリー全体の中で展開する山あり谷ありのどんでん返しが、見る者を飽きさせません。記憶喪失になったり、刺されたり、交通事故に遭ったり、意外な人と血がつながっていたりと。

個人的には、特に運命の描き方が秀逸だと思っています。私たちは何気なく人と付き合っていますが、なぜ大勢の中からその人と付き合うことになったのか、よく考えてみれば不思議なことです。それを前世などの関係を持ち出してうまくストーリーを組み立てているのです。

時代を超えた“運命”を感じさせる作品群

今前世といいましたが、韓国ドラマにはタイムスリップものも多いです。私が見ただけでも、『ナイン』『イニョン王妃の男』『屋根部屋のプリンス』『Dr.JIN』などの狭義のタイムスリップものだけでなく、数百年にわたる時代を扱った『トッケビ』『星から来たあなた』『サイムダン(師任堂)』なども含め、時代を超えた運命を感じさせるいい作品がたくさんあります。あるいは現代の設定でも、やはり運命を強調したものが多いように思います。ちなみに私が一番好きなのは、まさにその運命をタイトルに冠した「運命のように君を愛してる」です。

韓国ドラマを見はじめて、私の考えが変わっていきました。哲学の世界にも、運命について決定論という立場があります。決定論では、宇宙誕生の時からすべての物事が物理的現象として決まっており、自由意志などないとされています。ニーチェ哲学などはこの立場をもとにしていますが、私はそれでも自由意志はあると考えてきました。実際、私が今ここで誰かに愛の告白をしようと決めたなら、それは私の自由意志によって決められたといえるはずです。たとえ予め決まっていたとしても。

でも、もしかしたらいくら私が抗ったとしても、どうしてもここで愛の告白をする運命にあるのかもしれません。こんなふうに韓国ドラマは、哲学する際にも影響を及ぼすのです。そのうち『韓国ドラマで哲学する』という本を書きたいと思っています。