韓国ドラマの魅力とは何か。哲学者の小川仁志氏は「韓国ドラマの秀逸さは、運命の描き方にある。そのストーリー構成は、ニーチェらに代表される“決定論”をベースにしている」という――。
哲学者の新しい趣味は、韓国ドラマ
私は1年くらい前から新しい趣味をはじめました。それは韓国ドラマを見ることです。先日知人にその話をしたら、「専業主婦かいっ!」と突っ込まれました。たしかにかつての冬ソナブームの頃は、専業主婦が見るものというイメージが強かったかもしれません。
しかし今は、K‐POPのスターが出演していたり、若い人向けのストーリーも多いので、若い人たちも結構見ています。現に学生にこの話をすると、意外とファンが多くて驚かされます。もちろん主婦も見ていますし、その影響でご主人が見ているという話もよく聞きます。つまりみんなが韓国ドラマを見ているのです。
日韓関係が悪化しても、日本の韓国ドラマファンにはあまり影響はないようです。ドラマは文化と割り切っているのでしょう。K‐POPもそうですし、韓国料理もそうです。私もいずれも好きなので、正直政治のごたごたにはうんざりしています。どっちの言い分もわかりますが、国民の楽しみを奪うようなやり方はやめてもらいたいものです。
余談ですが、私の大学には毎年世界中から留学生がやってきます。その歓迎の場でこんなスピーチをしました。「韓国の留学生のみなさん、この大変な時によく日本に来てくれました。みなさんに敬意を表したいと思います。どうもありがとう!」と。すると、世界中から集まった留学生たちから大きな拍手が起きたのです。私にはその拍手が、「僕らの関係を決めるのは、政治じゃない」という彼らの強いメッセージに感じられました。