単価を高くすれば儲かるというのは幻想
それでは、もっと儲けるために、単価の高いものを正直に売ればいいじゃないかと思った人もいるでしょう。
詐欺にはリピートが期待できないから、単価を高くするしかないわけですが、「単価が高いものが儲かる」という発想もまた、幻想です。
僕は大卒でゲームメーカーに入社したのですが、じつは、入社1年目から高級アンティークショップで副業をしていました。
その高級アンティークショップには、100万円以上の高級家具が置いてあったのですが、めったに売れないのです。
一方、ゲームセンターは「1回100円」で単価は安いが、リピーターが非常に多い。結果的には高級アンティークショップよりも、ゲームセンターのほうが儲かるわけです。
価格の高いものは、基本的に利益率も高く設定をしていますが、消費者にとっては、なかなか手に届きません。
例えば、500万円の車が400万円になっていれば、お買い得だと思い、買う人もいるでしょう。しかしみんながみんが、車に400万円を出せるわけではありません。
では、1回100円のゲームやダイソーなどの100円均一ショップを考えてみましょう。安いと思い、買いすぎたりしたことはないでしょうか。
ファストフードのハンバーガー店を見てみても、価格競争で優位に立っている企業は多くの店舗(フランチャイズを含む)を抱えることができますが、1個1500円もするようなハンバーガーショップは一店舗では成功するが、全国くまなく出店しようと考えると難しいでしょう。
いずれ顧客は嘘を見抜くので稼ぎは単発で終わる
嘘つきが長期的にお金儲けができない理由は、まだあります。
それは、顧客はそんなにバカではないということです。
今でもありますが、顧客から数百万円や数千万円といった資金を集めるや投資詐欺は、嘘を言いながら、お金を集めます。
しかしそのような会社が、長年存続できるわけはありません。なぜなら、嘘はすぐにバレてしまうからです。
食品偽装にしても、投資詐欺にしても、また法の抜け道を使って人を騙すような仕事も、いずれ消費者に見抜かれ悪名を全国に広げることになってしまうでしょう。
詐欺師は、「顧客を簡単に騙せる」と思っていますが、人はそんなにバカではありません。数十人、数百人と被害者が増えていけば、必ず、その分野に精通した人と出会います。その瞬間、これまで作ってきた虚構は一気に崩れ、詐欺師の人生はそこで終わるでしょう。
どんなに巧妙な罠を仕掛けても、続くことはありません。その結果、詐欺師は2度と表舞台に立つことはできないのです。
つまり「たくさんの人から少額のお金を集める商売」が、一番潤うということです。
パナソニックの創始者、松下幸之助は、「一人の顧客を守ることが、百人の顧客につながる。一人の顧客を失うことは、百人の顧客を失うことになる。その気持ちを忘れてはいけない」と言いました。
嘘をつくことなく、顧客を騙すことなく、真摯にビジネスを行えば、きっとお金もついてくるでしょう。