眼科は何のための診療科なのか?
自分が眼科にかかるときのことを思い出してみよう。どのような目的で訪れるだろうか。“目が見えにくい”という単純な理由も多いだろう。このとき「初めての受診で症状も重くはないのに、やたらと複数の検査や治療を行う病院は気をつけたほうがよいかもしれません」と、近著に『続ムダな医療』がある、医療経済ジャーナリストの室井一辰氏は語る。
「『メリットよりもデメリットのほうが大きい医療行為』のことを、無駄な医療と言います。過剰な医療行為は余計な手間や出費がかかるばかりか、別の病気を呼びこんでしまう原因にもなり、デメリットが無視できない可能性があるのです。
眼科は、『もっと視力をよくしたい』つまり『今よりもよりよい生活を送りたい』という、QOLの向上を目的とした患者の多い診療科です。QOLを高めたくて病院に行ったのに、検査や治療で具合が悪くなっては本末転倒です。白内障やものもらいなど、病気を治すことが大切なのは言うまでもありませんが、検査や治療のメリットばかりではなく、デメリットにも目を向けるべきで、病院もそこを大切に考えているかが今問われているのです」
室井氏によれば、日本の健康保険で受けられる眼科の検査は1種類当たり自費の支払いとして1500~1万円程度。必要な検査であればよいのだが、1回の受診で余計な検査までつけ加えられていたとしたらどうだろうか。そんな金額が積み重なればたまったものではない。患者のことをまるでお金を背負ったカモと考える医師もいるかもしれない。
その大前提を踏まえた上で、無駄な医療にかからないようにするためのチェックリストだ。これは米国の名だたる医学会が挙げている無駄な医療のリスト「チュージング・ワイズリー」で示されたもの。訳すと「賢明な選択」で、賢明な選択を行うことで、無駄な医療を避けようというもの。残念ながら日本ではあまり浸透していない概念だが、米国の医療業界では非常に浸透している概念だ。室井氏は著書でそのリストを詳細に解説している。
「眼の病気についても『行わないほうがよい』と指摘されている医療行為があるのです。自分が眼科にかかる際は、注意しましょう」