上がらない賃金減少する人材育成

例えば、賃金である。独立行政法人労働政策研究・研修機構で私たちが2005年に行った調査によれば、バブル経済崩壊から復興過程の最後まで、多くの人が、「賃金上昇」の経験をしなかったことが示されている。

少しデータを見てみよう。この調査で、私たちは、3年前と比べての自分の賃金が、(1)個人の成果や業績によって上がった、(2)昇進や昇格によって上がった、(3)会社の業績が向上し上がったか、どうかを聞いた。その結果、上がったと答えた回答者は、全体2478人中、それぞれ(1)20.0%、(2)28.9%、(3)13.4%だった。多く見積もっても、全体の30%ぐらいの人しか賃金が上がらないという状態がここしばらく続いてきたのである。なかでも、いわゆる成果主義全盛のなかで、成果評価によって賃金が上昇したと答えた人は5人にひとりである。

もちろん、こうした状況は、企業業績が極めて悪く、企業が賃金を上げることができなかった、ということの結果かもしれない。そこで、経常利益が1995年から00年までに10%以上上昇した企業だけ(以下、業績の上がった企業)を抜き出して分析してみた。その場合、確かに「会社の業績が向上して、賃金が上がった」と答える回答者の割合は、全体サンプルで見られた13.4%から22.4%まで上昇するが、それでも20%より少し高いだけである。

さらに、上の3つの理由で賃金が上がったと答えた回答者のうち、同じ時期に残業も含めて、労働時間が増加したと答えた回答者は、賃金の上がった回答者の45%に上り、多くの人にとって、時間当たりの単価は、上昇していないことが示唆される(ちなみに、賃金が上昇しなかった回答者のうち、労働時間が増加したと答えた割合は、38%だった)。

結論として、過去5年間ほど、賃金の上昇に関して、働く人はかなり厳しい状況を受け入れてきたのである。

比較のしようがないので明確には言えないが、直感的に考えて、全体の3分の1しか賃金が上がらない状態が3年間も続いたとしたら、それは極めて異常な事態であると言わねばならないだろう。ましてや、それ以前の賃金体系が、ベースアップや定期昇給など、時間の流れとともに上昇する賃金を働く人に提供してきたのだから。