起業であれば、脱サラして飲食店を開く人が少なくないが、飲食業界は競争が激しい。開業のハードルは低いものの廃業率が高い厳しい世界だ。また、ゼロからの起業に比べても、その業界で長年経営を続けてきた中小企業を買い取るほうがリスクは小さいと三戸さんはいう。

「私は『金のタマゴを生むニワトリ』と言っていますが、ニワトリ(株)を買って育て、金のタマゴ(利益)を生んでもらうのです。最初は自分で経営をする必要があるかもしれませんが、会社がうまく回る仕組みをつくり、社長は誰かに任せ、さらに次のニワトリを買う。そうして単なる企業経営者ではなく、『資本家』になることを私は提案しています」

会社を買うのは、できれば40代後半から50代前半が理想だという。

「会社を買うのに年齢は関係なく、20代でも30代でもヤル気があり優秀な人ならば誰でも構いません。ただ、老後を考え始める40~50代は人的資本に恵まれています。ビジネスパーソンとしての実務経験が豊富で、特に中堅・大企業で中間管理職を務めているような方は、その業界の知識はもちろん、人脈などのネットワークもあるでしょう。中小企業ではそうしたリソースを生かすことができます。会社を買うのは老後でも、その前の数年、買収候補先企業で役員として勤めるというのも買収後の経営をスムーズに行うためにおすすめの方法です」

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自分のやりたいことで会社を選ぶ

会社を買うには具体的にどうすればいいのか。会社の「売り案件」情報は、かつては極秘情報だったが、いまは中小企業を専門とするM&A(買収・合併)仲介会社が多数存在し、売り手と買い手をマッチングして価格交渉などの仲介を行っている。売り案件の情報はインターネットでも簡単に手に入る。

業界最大手の日本M&Aセンターのグループ会社バトンズが手がけるM&Aマッチングサービス「Batonz(バトンズ)」や、トランビが運営する事業承継・M&Aプラットフォーム「TRANBI(トランビ)」などには、小売り、製造業、サービス業など多数の売り案件の情報が掲載されている。売却希望の企業名はわからないものの、業種や業績、希望売却価格などは誰でも見ることが可能だ。